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ならせて(1)
あっという間にバイトは終了し、俺はかかりつけ医の元へ訪れていた。
自分の名前が呼ばれて部屋に入ると、気だるそうにパソコンと向かい合うまーやんがいた。
まーやんは俺のかかりつけ医。なんでまーやんって呼んでるのかは忘れたけど。付き合いも長い分、お互いのノリは軽いもので、ちょっと年の離れた友達みたいなものだ。
患者用の椅子に座ると、視線がこちらに向いた。
「で、どうしたんだ? まだ薬はきれてねぇと思うが」
「薬は先週もらったから違うって。俺の性のこと」
「そろそろ安定してきたのか」
「うん。ずっとアルファばかりきてたし、もう三ヶ月くらい発情期がこない」
「ほぉ」
言い終わると、パソコンに打ち込んだ情報を見つめ、まーやんは何かを考え込んでいる様子だった。
まーやんはため息をひとつこぼす。
「とりあえず、検査するか。採血すんぞ」
「えー、あれ痛いからヤダ」
「ガキみたいなこと言ってんじゃねぇよ」
「まーやんの鬼畜ー」
しっしっ、と手で払われたので、その手を叩いておく。
ついでに軽口を叩きながら、検査のために診察室を後にした。
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