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 まーやんはページを開いたまま伏せて机に置くと、真面目な表情で俺を見た。  久々に見るまーやんの真剣な顔に、なにか悪い話なのかと少し不安になる。 「……ハル、そのアルファのことは好きか」 「うん」 「番になりたいとか思うくらいに?」 「メグ先輩と? まさか!」 「は?」  なんてことを言うんだ、とまーやんを見る。俺とメグ先輩が番なんて、そんなおこがましいことをよくもまぁいけしゃあしゃあと。  まーやんは、俺が全力で否定してもまだ納得していない様子だった。 「メグ先輩はかっこよくて優しくて、仕事も勉強もスポーツも、料理だって、なんでもできる、ほんっとに凄い人なんだからな!?」 「あーはいはい、ようは大好きなんだな」 「うん大好き。本当にお世話になったし、ずーっと憧れてる」 「でも番にはなりたくないと?」    そう言われて、俺は少し黙り込む。  まーやんになら、俺がずっと思ってることを言ってもいいと思う。むしろ、なんで今まで言ってこなかったのだろうか。  話してもいい? と視線を向ければ、それが伝わったように頷かれた。さすが、俺が中学生の頃からの付き合いだ。 「……俺、さっきも言ったけど、メグ先輩のことめちゃくちゃ大好きなんだよ。でも、俺はメグ先輩の"運命"じゃないから。メグ先輩は選ばれたアルファで、そんな特別な人を幸せに出来るのは、やっぱり選ばれたオメガ……"運命の相手"だと思う」 「なるほどな。……お前はそれでいいのか?」  まーやんの問いかけに、俺はしっかりと頷く。  たしかにメグ先輩のことは大好きだ。この三年間でひとつふたつと積み上げた恋心は、様々な色を重ね、深く美しい色彩を成している。  出会ってからずっと、いろんなメグ先輩に恋をしてきた。  だからこそ、メグ先輩が運命の相手を連れてきたら、ちゃんと笑顔で祝福を送るつもりだ。  メグ先輩が幸せであること以上に、大切なものはないのだから。  

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