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「あとね、ハル。これだけは言わせて」
「ん?」
「ハルを番にしないこと以上の後悔なんてないよ」
「えっと、どういう……?」
身体を起こして、涙を拭いながら問いかける。
メグ先輩の言葉の意味がわからないわけではないのだが、意図がつかめない。
もしかして、さっき俺が「俺なんかを番にして後悔してる」って言ったことに対しての言葉だろうか?
「ハルを番にしなかったら、あの時どうして番わなかったんだろうって、一生後悔するに決まってるからね。ハルを番にしなければよかったなんて後悔、贅沢すぎる」
「そんな価値、俺にはないけど」
「俺にとっては世界一だよ」
そう言って、メグ先輩はそっと唇を重ねてくる。柔らかいキスを受け止めると、安らぎと喜びが胸いっぱいに滲んだ。
メグ先輩からの愛情や温もりを求めていたのは他でもない自分で、それを失う「いつか」を恐れ、拒んでいたのもまた、自分自身だった。それがわかればもう十分だ。
溢れんばかりの愛と慈しみが綺麗に上書きされていく。不安に震えていた自分を、優しい温もりで包み込んであげられる。
全て、メグ先輩からのプレゼントだ。
「愛してるよ、ハル」
「俺もメグ先輩を、愛してる」
ずっと、ずっと。
ひとつの言葉にたくさんの想いを込めた。それはきっとメグ先輩の胸にしっかりと届いていることだろう。
メグ先輩が浮かべる、とろけるくらいに甘い微笑みを見れば確認なんて必要ない。その眼差しから伝わる言葉に、俺のゆるんだ笑みが深くなる。
誰もが羨ましがるような「幸せ」を、メグ先輩のそばで願おう。
そんな誓いを立てるかのように、そっと口付けを交わした。
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