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宮本が失踪なんてどういうことだよ8

(バカ正直なアイツのことだ。どれにしようかなって、唱えながら決めただろう。それに左右で迷うくらいなら、真ん中を突き進むハズ!)  そんなことを考えながら、道なき道をどんどん登って行く。迷わないように途中立ち止まって、ビニール紐を木に括りつけることを忘れない。それを何度か繰り返して真っ直ぐ突き進むと、水の流れる音が耳に聞こえてきた。 (川の音にしては大きな音だし、流れが早そうな感じだな。もしかして――)  適度に傾斜がキツい坂道を登りきったら、目の前が突然開けた。 「あ……」  視線の先に、捜していた人物が映し出される。呼吸をするのも忘れて、そのまま駆け寄った。山道なので大きな岩や木の根っこがところどころにあって、何度も躓きそうになったが、それでもなんとかやり過ごして、遠くにいる宮本に近づく。  草むらをかき分けて、大きな音をたてながら俺様が走っているというのに、木の根元に背を預けて眠っている宮本は気づかないらしく、ぐっすり眠ったままだった。 (――眠っているんじゃなく意識を失っていたり、違う可能性だってあるだろ)  嫌な考えで胸が詰まりかけたが、それでもしっかりしなければと気持ちを律して、疲れで震える両足を使い、なんとか宮本の前に辿りついた。 「宮本、起きろ! 生きてるんだろ、頼むから目を開けてくれ!」  力任せに両肩を掴んで思いっきり揺さぶったら、眉間に皺を寄せながら、ゆっくり目を開ける。 「あれ、江藤さん……」 「宮本っ! 宮本よかった! 生きていて本当によかっ……」  途端に力が一気に抜け落ちてしまい、そのままぎゅっと縋りついた。 「江藤さん、俺を捜してくれたの?」 「そんなの当たり前だろ。俺様を誰だと思ってる。おまえの上司兼恋人だからな」  泣き出しそうになったが、意地でも歯を食いしばってやり過ごした。 「俺、迷っちゃって……。携帯のバッテリーが切れちゃうし、予備のバッテリーももってなかったし、連絡手段がなくてすっごく困った。それで思い出したんだ」  宮本は俺様の背中に腕を回して、宥めるように撫で擦る。それのおかげで、気持ちがかなり落ち着いた。 「なにを思い出しだんだ?」 「半年前に江藤さんとショッピングモールで買い物したときに、はぐれたことがあったでしょ」 「確かに、そんなことがあったな」 「あのとき江藤さんに、迷ったときは無駄にうろつくんじゃねぇって、しこたま怒られたことを思い出してさ。だからここで待ってた」  宮本の視線の先には、大きな滝があった。

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