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レクチャーⅣ:そういうことだよ!?6

「そんなバカすぎる、おまえを受け止められるのは、俺様くらいしかいないだろ。よくできた先輩だからな」 「そんな優しい江藤さんが大好きです」 「佑輝くんの中にある想いを、この躰に刻み込んでみろ。下手くそだって構わない、不器用だっていいさ。しょうがねぇから、今夜くらいは目を瞑ってやる」  高校時代に接してくれた昔の優しい江藤を目の当たりにしているみたいで、自分の中にある気持ちもあの頃に戻ったような感覚さえあった。しかもこんなことを言われたら手加減できなくて、滅茶苦茶に抱いてしまうかもしれない――  柔らかくほほ笑んでいる江藤の顔を隠すように、唇を押しつけた。他の誰かがいるわけじゃなかったけど、俺に向かって笑ってるこの人の笑顔を独り占めしたいと強く思った。  その想いが手伝ってしまい、勢い余って前歯がちょっとだけぶつかったので一瞬引いたら、頬を掴んでいる江藤の両手が逃がさないと言わんばかりに力が入り、噛みつくようにキスしてくる。歯茎を舌先を使ってゆるゆるとなぞった後、上顎に沿ってぐちゅぐちゅと音を立てるような動きを仕掛けてきた。 「うっ……はあぁっ」 (もしかして風呂場での一戦とさっきのキスで、俺が下手だと認定されてしまったから、こうして江藤さん自ら俺を感じさせながら、教えていたりするするんだろうか?)  上顎を撫でている薄い舌を捕まえるように絡ませながら、ちゅっと軽く吸ってみる。 「んあっ、ゆ、うきくんっ……いい」  躰をビクつかせてすげぇ甘い声で告げられた言葉が、胸にじんと染み渡った。だからこそもっともっと、大好きな先輩を感じさせたくなってしまった。  絡めていた舌をゆるっと放して、ゆっくりと上顎をなぞるように上下させてみる。はじめて江藤の中に自身を挿れたときと同じ動きで、舌を出し入れしてみた。 「んっ、んんっ……はあ、ああっ!」  とろっとろに蕩けた顔で自分を見上げながら舌の動きに合わせて、熱を持った下半身を押しつけてくる。 「江藤さん、腰の動きがエロすぎですって。挿れる前に、イっちゃうかもしれない」 「しょうがねぇだろ。俺様を感じさせるおまえが悪いんだ。早くひとつになりたいんだよ」 「その気持ちは分かるんですけどもう少しだけ、江藤さんを堪能させてください。五感全部を使って、大好きな貴方を感じたい」  ひどく掠れた声で強請られてしまった言葉を拒否したことは、後輩としても恋人としても最低だろう。  でも風呂場では我慢できずすぐに挿入したので、ベッドで抱き合っている今は真正面からこの人を愛してあげたいと思った。  お風呂上りに無造作に躰の水分をバスタオルで拭う自分の横で、江藤は洗面台の上に置いてあったボトルを手に取り、滑らかな肌に何かをつけていた。そのとき辺りに漂った匂いが大好きなシトラス系の香りで、だからこの人からいつもいい匂いがしていたんだと感心したんだ。  そして今、しっとりとかいた汗とそれが混ざり合い、興奮する材料になっている。シトラス系の爽やかな香りが花のような甘い香りに変化して、これでもかと鼻腔をくすぐった。 (この香り、江藤さんを抱いたら俺にもついちゃうのかな――)  線の細い躰をぎゅっと抱きしめながら、首筋に舌を這わせる。首の付け根に強く吸いついて、赤い花を咲かせてしまった。 「痛っ……。おいコラ、あんまり痕をつけんなよ」 「嫌だね。たくさん印をつけまくって、俺のものだっていうのを江藤さんに分からせたいから」 「分からせたいなんて、俺様はおまえと違ってバカじゃねぇし。忘れないから安心しろ」  ちょっとだけ軽蔑した目で見る江藤の意見をしっかり無視して、いたるところにキスマークをつけながら、むさぼるように激しく抱いた。  お蔭でそれなりに甘く一夜を過ごすことができた上に、お互いの貸し借りをしっかり清算して、ふたり仲良く抱き合いながら朝を迎えたのである。

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