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愛を取り戻せ②:お見合いをぶち壊したい4
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【重大なお知らせ】
江藤ちんがお見合いするとのことで佑輝が突然、彼女を作ると言い出した。ふたりが付き合ってるみたいじゃないからあえて止めなかったけど、一応報告しておくな。
明日のお見合いの成功を祈ってる。
「――佑輝くんが彼女を作る……」
残業を含めた仕事を何とか終わらせた。そんな一日の疲れを引きずった躰で帰宅し、リビングのソファに座りながら雅輝から送られてきたメッセージを読んだ。
短い文章を何度読んでも内容は変わらないというのに、目を通さずにはいられない――
目の前にあるテーブルには、佑輝くんがお礼として渡してくれた大量のポッチーが、手付かずのままで置かれていた。
今やっている厄介な仕事やいろんなことで、ひどく頭がぐちゃぐちゃしている状態にある。そのせいで脳みそが間違いなく糖分を摂取したがっているというのに、なぜだかポッチーに手が伸ばせなかった。
これを見るたびに思い出すんだ。
コンビニ前でビニール袋からポッチーを取り出しては、口元を綻ばせながら手渡されたときの宮本の笑顔を――雅輝とケンカして一番キズついたあのときも、同じ笑顔に癒されたっけ。
(……って何を考えてるんだ。元彼の弟で後輩の佑輝くんが彼女を作るとか、実際いい話じゃないか。これで少しは、仕事に精が出るってもんだろ)
気持ちがふわりと浮上するが、微妙な心情を感じとった瞬間一気に下降した。喜ばなければならない事実だというのに、どうして――
積み木のように山積みされたポッチーを前に手を出せず、ただ眺めることしかできない。
「俺様は一体、どうしたいんだ? 自分の気持ちがさっぱり分からない」
――佑輝くんが彼女を作る――
メッセージに書かれたその言葉だけが、胸の中に重く圧し掛かったのだった。
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