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ゲイバー・アンビシャスの憂鬱

 忍ママにいろいろ相談に乗ってもらっている手前、宮本の奴を紹介しなけりゃいけねぇだろうなぁと、渋々店に連れてきた。 「これが江藤ちんが手を焼いているという、部下の宮本ね。ゲイバー・アンビシャスにようこそ! とりあえず会員登録してもらわなきゃお酒が出せないシステムになってるから、この紙に必要事項を記入してちょうだいな」  本日の忍ママのお姿は、ウェーブのかかった肩までの長さの茶髪に、真っ赤なルージュを唇に塗ったくり、オレンジがかったピンク色のカーテンのようなワンピースを身に着けていた。  毎度毎度、奇抜な色を使いまくっているため、目が疲れてしまうのはここだけの話だ。  珍しいことに店には客は誰もいなくて、カウンター席の右端に宮本と並んで腰かけていつものやつを注文してから、ボールペン片手に汚い字で自分のことを書いている宮本を見下してやった。 「うーん、ニックネームは何がいいかな?」 「宮本にしとけ。そんなくだらないことで悩むなよ。相変わらず馬鹿だな」 「でも江藤さんには佑輝くんって呼ばれてるから、それを書こうかなぁ」 「おまえ、あの忍ママにその名前で呼ばれることになるけどいいのか?」  したり顔をしながら口にしてやると、心底嫌そうな表情をして激しく首を横に振りまくった。 「それと他人に読んでもらうんだから、もう少し綺麗な字を書けよ。俺様はおまえのものを読み慣れているからギリギリ読めるが、老眼の入った忍ママが読むにはそれじゃあ厳しいからな」 「老眼入ってて悪かったわね! はい、ミントジュレップよ。ちなみにいつもより愛情込めていないから!」  言いながら宮本にも同じものを置いていった。 「忍ママのラブが注入されていないんじゃ、一味足りないんじゃねぇのか?」 「あたしのラブがなくたって、隣から貰えば美味しくいただけるでしょ。気を遣ってあげたのよ」 「はいはい。ありがとうございます」 「さっきから目の前で、イチャイチャしちゃってさー。会社でも同じようにしてるんでしょ?」  忍ママの言葉を聞いて、あからさま過ぎるくらいに顔を歪ませた宮本は、書類をカウンターに差し出した。 「記入ありがとね、どれどれ……。はあぁっ、若いっていいわねぇ。江藤ちんの躰が持つのかしら」

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