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秘めたる想い:愛をするということ2

「それ、佑輝にも言ってやってくれよ。アイツのほうが顔を出していないんだからさ。お蔭で俺に、いろいろと質問の矢が飛んでくるわけだし」 「質問の矢?」 「顔を出さない理由は、彼女がいてラブラブだからなのかってさ。一応いることにしてうまく濁してみたら、今度はどんな人なんだとか年齢とか気になることを訊ねられて、ごまかすのに苦労してる状態なんだよ。ちなみに、もう付き合ってるんだろ?」  自分が口にする前に突きつけられてしまった言葉で、一瞬躊躇ってしまった。雅輝に先にそれを言われるなんて、想定外だったから。 「お袋さんのこと、その……いろいろ悪いな。俺が恋人だと知ったら、大変なことになるだろうし」  視線を伏せて、自分の手元を見つめながら告げるしかない。事前に考えていたセリフが、全然出てこなかった。もっとこう、雅輝の気持ちを慮って告白したかったのに肝心なところでいつも、気弱な自分が出てしまう。 「江藤ちん、そんなつらそうな顔して自分を責めるなって。俺はふたりの付き合いを賛成しているんだから」 「……どうして賛成できんだよ。なんで!?」  顔を上げて隣にいる雅輝を見たら、包み込むような優しい笑みで見つめてきた。 「どうしてって、おまえが佑輝となら幸せになるだろうなって思うから」 「自分と同じように、駄目になるかもなんて考えないのかよ?」 「考えない」  潔く即答しながら見つめてくるまなざしには曇りががひとつもなくて、雅輝が真実を告げているのが分かった。 「江藤ちんと付き合ったときは俺が束縛しちゃったせいで、苦しめる結果になっただろ。男同士なのに何も考えずに、人目のあるところでイチャイチャしようとしたりしてさ。その束縛から逃れようと友達付き合いを広げるおまえに、さらに嫉妬してバカみたいだったよな」 「……バカじゃねぇよ。雅輝の気持ちを考えられずに自分の立場ばかり気にした、俺様も悪かったと思う」 「あの頃よりもお互い大人になっているし、頼りない俺の弟の佑輝だけど、ここぞというときは頑張れる男だからさ。ほら……」  雅輝が指し示したところには、こっちに向かって走りこんでくる宮本の姿があった。 「なんで、アイツが――」 「俺が情報をリークしておいた。時間通りに現れないところは、さすがは兄弟って感じだな」 「はぁはぁ……。で、遅れたっ……」  息を切らして膝に両手をついた宮本を、意味深にニヤニヤする雅輝と驚いた自分が見つめる。その場の雰囲気は三人三様だったので混沌としたものだったが、居づらいわけではない。 「宮本、何しに来たんだ?」  雅輝への報告は俺様がするからと念を押していたというのに、わざわざ顔を出すなんて何を考えているのやら。このバカのことだ、余計な情報を口走る可能性だってあるだろう。  ベンチに座ったままムッとしながら見つめる視線を受けて、顔を一瞬だけ引きつらせた宮本だったが、たじろぎつつも息をきちんと整えて、じっと見下してきた。 「実の兄貴兼元彼に、俺の口からだって報告したいことがあるんだ」 (宮本からの報告……。どうにも嫌な予感しかしないぞ) 「雅輝にはほとんど報告済みだ。祝福もされた。おまえの出る幕なしだ、よって口を出す必要はない」 「まあまあ、いいじゃないか。弟からどんな報告があるか、兄貴として気になるし」 「気にするな! 頼むから、アイツのやる気を引き出すようなことを言うなって。ロクに仕事のできないヤツの言うことなんか、面白くないに決まってる」  両手で頭を抱えて嫌々を示すべく首を横に振りまくる姿を見て、雅輝はお腹を抱えて笑い出した。何がそんなに可笑しいのやら、目には涙が溜まっている状態だ。 「あの、ふたりとも……」 「言うな。言ったら殺す!」 「怯まずに言え。きちんと墓は掘ってやるから」  親指を立てながら爽やかに言い放った雅輝へ一発お見舞いしたかったが、仲のいい友人にそれはできない。大事にしたい友人だからこそ――だが、宮本相手だとそれができる。いつでもどこでも誰が見ていようが、コイツに向かって容赦のない一発をお見舞いできる。  コイツが自分に対する好きという気持ちの上で、思う存分に振る舞うことができる。何をしても宮本の好きが変わらないと、頭じゃなく心で分かっているから甘えてしまうんだ。

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