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第6話 楽しい時間

それから僕は、毎週土曜日になると、銀ちゃんに会いに神社の裏側に来て名前を呼んだ。 名前を呼ぶと、銀ちゃんはいつもすぐに飛んで来て、僕を連れて、また飛んで行く。 あの広場だけでなく、町の景色が見渡せる山の頂上や、虹のかかる滝や、綺麗な石がきらきらと光る洞窟にも連れて行ってくれた。 冬休みに入ってからは、毎日会いに行っていっぱい遊んだ。 雪が積もって、普段なら僕の足じゃ歩けない山道も、銀ちゃんはなんなく飛んで行く。真っ白な雪景色の中で、銀ちゃんの銀色の翼は、まるで宝石のように輝いて、とても綺麗だった。 ある時、銀ちゃんが、僕が毎日山に遊びに来るから心配して聞いてきた。 「凛の親は何て言ってるんだ?」 「お父さんとお母さんは、朝早くに仕事に行って、夜暗くなってから帰って来るから、家にはおばあちゃんしかいないよ」 「そうか…。おまえの祖母は気にしてないのか?」 「兄ちゃんと遊んでると思ってるよ。あとは幼稚園の友達と。大丈夫!凛、秘密は守ってるよ!」 僕の話を聞いて、銀ちゃんはにこりと笑うと、僕の頭を優しく撫でてくれた。 でも、おばあちゃんは僕がどこに遊びに行ってるのか、気になってたみたいだった。 お正月の3日間は、銀ちゃんに会えないと言われてたから、家で家族とのんびり過ごした。 次の日の4日から、お父さんとお母さんは仕事に行った。僕は銀ちゃんに会いに行く為に、ジャンパーを着て玄関で靴を履いていると、おばあちゃんに「凛」と呼び止められた。 「なあに?おばあちゃん」 「あんた、銀ちゃんとやらに会いに行くんやろ?」 僕はびっくりして、靴を落としてその場に立ち上がる。 「なっ、なんで知ってるのっ?」 「毎日、あんたは楽しそうに遊びに行くけど、廉はあんたと一緒には遊んでない言うし、あんたの友達の親に会った時に聞いたら、遊びに来てへん言わはるし、おかしい思ってな。悪いけど後をつけさせてもらってん」 「い、いつ?じゃあ、銀ちゃんを見たの…?」 僕はドキドキしながら、手をぎゅうと握りしめた。 「ふふ、そんな怖がらんでもええ。年末にな、あんたがいつもどこに行ってるか気になって、後を付いて行ったんや。ほな、神社に入って社の裏側に行きよるし、こんな所で何して遊ぶんや、思ってたら、まあ綺麗な男の子が現れた。どこの子や、思って見てたら、銀色の大きな翼であんたを抱えて飛んで行ってしもた」 おばあちゃんが僕の傍に来て座り、僕の手を引いて自分の膝の上に座らせる。 「最初は慌てたけどな、でもあんたは嬉しそうに『銀ちゃん』言うて懐いてるし、男の子も優しい目であんたを見てたしな…。まあ大丈夫やろ、思って、一旦家に帰って来てん」 不安げにおばあちゃんを見る僕の頭を、そっと撫でてくれた。 「凛が帰って来るちょっと前に、また神社に行ってな、社に隠れて見ててん。ほな、あの綺麗な子があんたを抱えて飛んで戻って来て、大事に降ろしてくれとった。ふふふ、あんたがお礼を言って、男の子のほっぺにちゅうした時のあの子の困った顔は、面白かったわ…。凛はあの子が好きなんやな…」 「うん…。凛、銀ちゃんのこと、大好き。でも、銀ちゃんと会ってるのは、誰にも秘密だったんだ…。おばあちゃんに知られちゃったから、もう…会えなくなっちゃう…っ」 涙をぽろぽろと零してしゃくり上げる僕に、おばあちゃんは服のポケットからハンカチを出して、僕の顔を拭いてくれた。

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