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第5話 銀の秘密
ふわりと身体が浮き上がる感じがして、僕は銀ちゃんにぎゅっとしがみ付いた。僕の顔の横で、銀ちゃんのくすくす笑う声が聞こえて銀ちゃんを見ると、「凛、見てみろ」と目線を下に向ける。
僕は、銀ちゃんの目線を追って下を見た。
「わあっ、すごい!」
銀ちゃんに抱き上げられた僕は、周りの木々よりもずっと高い所に浮いていた。
銀ちゃんが僕をしっかりと抱き直して、
「行くぞ、凛。目を閉じるなよ」
そう言うと、ものすごい速さで飛んでいく。下を見ると、赤や黄色の木が遠くまで続いていて、とてもきれいだった。
あっという間に、先週に連れて来られた場所に着いた。銀ちゃんはゆっくりと地上に降りて、僕をそっと降ろしてくれる。足が着いた途端、少しふらりとして銀ちゃんの服を掴んだ。
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと、どきどきしちゃった…」
心配して僕を覗き込む銀ちゃんに、えへへと笑って見せる。
いつの間にか銀色の翼は消えていた。
「銀ちゃん…翼は…?」
「ああ、あれは飛ぶ時しか出さねえよ。俺のは銀色だっただろ?だから、俺の名前は銀(しろがね)って言うんだ…」
「そうなんだ…。銀ちゃんの、すごくきれいでかっこよかった。また見せてくれる?」
「いいぜ。帰りもまた飛んで連れて帰ってやるよ」
僕はぱあっと笑顔を見せて、銀ちゃんに抱きついた。
「ほんとに?ありがとう。銀ちゃん大好き!」
僕のとびきりの笑顔に、銀ちゃんが腰を屈めて僕の頭をぐりぐりと撫でる。
僕は銀ちゃんの肩に手を置くと、背伸びをして銀ちゃんの頰にちゅうをした。
「大好きな人にはこうするんだって。兄ちゃんが言ってた」
「……っ」
そう言って、僕はにこにこしながら銀ちゃんを見る。
銀ちゃんは、頰に手を当て、目を大きく開いて僕を見ていた。
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