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第9話 大きな悲しみ

おばあちゃんに知られてからも、僕と銀ちゃんは、毎週土曜日に会い、春休みは毎日一緒に過ごした。 僕は、この楽しい日々が、ずっと続いて行くと信じていた。 僕が年長の夏休みに入ってすぐに、お父さんとお母さんから話があると、家族全員が居間に集められた。 おばあちゃんは、もうどんな話かわかってるみたいで、お父さんは、僕と兄ちゃんに向かって話し出した。 「廉と凛、お父さん、東京に転勤が決まったんだ。だから、お母さんも仕事を辞めて、廉と凛と4人で東京に行く事になった。来週中には、荷物をまとめて引っ越すよ。それまでに、友達とちゃんとお別れをして来るんだよ、いいね…」 「「えっ!東京?」」 僕と兄ちゃんは、揃って声を上げて驚いた。でも、兄ちゃんは、すぐに嬉しそうにしてはしゃぎ出した。 「やった!東京って超都会じゃん!よっし、皆んなにお別れついでに自慢してこよーっと」 そう言いながら、自分の部屋へ戻って行った。 僕は…僕は嫌だった。銀ちゃんと会えなくなっちゃう。おばあちゃんとも離れてしまう。兄ちゃんみたいに、喜べない…っ。 僕は、涙が滲みそうになるのを堪えながら、お父さんに聞いてみた。 「お父さん…、おばあちゃんはどうするの?1人になっちゃうよ?凛…東京に行かないで、ここにいちゃ駄目かな…?」 「駄目に決まってるだろう。おまえは、来年、やっと小学生になるくらい、まだ小さいんだ。お父さんお母さんと一緒にいないと駄目だ」 「そうよ、凛。じゃあ凛は、お父さんやお母さんと離れてもいいの?」 お母さんが僕の前に来て、僕の両手を握り、顔を覗き込んで聞いてくる。 「嫌だよ…。嫌だけど、おばあちゃんともここを離れるのも嫌だ…っ。うわぁん…」 僕は、とうとう我慢できなくて、泣き出してしまった。 お母さんが僕の頭をそっと抱き寄せて、背中を撫でてくれる。 「ごめんね…凛。辛い思いさせちゃって。でも、ここには、お正月や夏休みには帰って来るから…、ね?それに、東京に行ってもすぐに、お友達が出来るわよ」 ひくひくと肩を震わす僕に、おばあちゃんが声をかけてきた。 「凛、おばあちゃんの事なら大丈夫やで。まだまだ元気やから何でも出来るわ。近所に友達もたくさんいるしな。 たまに、遊びに来てくれたら、それでええよ。あんたは、お父さんやお母さん、お兄ちゃんと一緒に行かなあかんで。凛の好きな友達も、話したらわかってくれるわ…。明日、ちゃんとお別れしといで」 振り向いておばあちゃんを見ると、優しく笑って僕を見ていた。 「うん…わかった…。お友達にちゃんと言ってくる。おばあちゃん…ずっと元気でいてねっ。絶対だよっ」 おばあちゃんが頷くのを見て、僕の頰にまたぽろりと涙が零れ落ちた。

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