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第83話 悪い予感

俺の叫び声に反応したのか、蛇が草むらから出て来て向かってくる。 慌てて二、三歩後ろに下がったその場所には地面が無くて、俺は山道から足を踏み外した。 「うわぁっっ」 「え?凛ちゃんっ!」 清忠が俺の声に驚いて振り向き、落ちる俺に手を伸ばす。指先が微かに触れたけど握れずに、俺は木の幹や石ころにしこたま身体をぶつけながら、急な斜面を転がり落ちた。 一瞬、夏に崖から落ちた事を思い出して冷やっとしたけど、すぐに落下が止まった。 「いててて…。うわぁ、泥だらけになっちゃったよ…」 「凛ちゃん!大丈夫っ?」 上を見上げると、2、3メートルの高さから清忠が顔を覗かせていた。 俺は、自力で這い上がれないものかと、斜面から伸びた木の枝を掴む。斜面に足をかけてぐっと力を入れた時に、ずきんと鋭い痛みを感じて、その場に尻餅をついてしまった。 「いたっ。清、どうしよう…、足が痛くて登れない…」 「えっ、まじで?もしかして、捻挫か折れてるかもしれない…。待ってて、俺が降りるから」 清忠が、道の脇にしゃがんで斜面を降りようと足を降ろした瞬間、バチンッと弾ける音がして、慌てて足を引っ込めた。 「やべぇな…。凛ちゃん、まずい所に落ちちゃったかも」 「え、なに?どういうこと?」 清忠が難しい顔をして、斜面を睨みつける。 「ここ、強力な結界が張られてる。俺みたいな妖は入れなくなってる。う〜ん…、凛ちゃん、ちょっと待っててくれる?どこか入れそうな綻びがないか調べてくる。1人でも大丈夫?」 「結界があるの?…俺、落ちる前に蛇を見て驚いたんだよ…。もしかして清が言ってた蛇の妖の結界かなぁ?」 「そうかも…。とりあえず、急いで調べるわ。凛ちゃん、気を付けて待ってて」 「清も気を付けて」 親指を立てて離れる清忠を見て、少し落ち着いてきた。 俺はどうしようも出来ないので、地面に腰を下ろして膝を抱える。 パーカーとジーパンのおかげで、擦り傷や切り傷はなさそうだ。だけど、身体のあちこちを打ったみたいで、鈍い痛みがある。左の足首は特に痛くて、とても歩けそうになかった。

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