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第82話 校外学習

泊まっている部屋ごとの班に別れて、順番に出発して行く。 俺達の班は、前を青木と倉橋が歩いて、俺と清忠が後ろを付いて行った。 時々、前の2人が後ろを振り向いて、俺と清忠に話しかけてくる。今まであまり話した事がなかったけど、話してみると青木は明るく話がおもしろい。 倉橋は、育ちの良さそうな眼鏡をかけた秀才で、一学期のテストは全て学年トップだった。彼もまた、冷たい見た目に反して話しやすい。どうやら彼の家はそこそこ大きな神社らしく、将来自分が跡を継ぐのだと言った。 小一時間ほど歩いた所で、ふと前を見ると、青木と倉橋の姿が見えなくなっていた。 「あれ、2人は?」 きょろきょろと辺りを見回す俺に、清忠が笑う。 「早く登って、上でゆっくりするんだって先に行ったよ。凛ちゃんは自分のペースで歩いていいよ。俺も合わせるから」 「えっ、そうなの?気付かなかった…。俺がふらふら寄り道したり休んだりしたから遅かったんだよな…ごめん」 「ふふ、まだ疲れてるんだよ。ゆっくり行こう。それに、凛ちゃんは自然が好きなんだろ。楽しそうな凛ちゃん見てると俺も楽しいし」 「…ふぅ…そうなのかなぁ…。自分では元気になったと思ったんだけど。ありがと、清。俺さ、東京の暮らしも楽しかったけど、やっぱりこういう自然がある所が好きなんだ。俺に合ってると思う」 「そうだな。俺も自然の方が好きだわ。ほら、あそこに変わった花がある」 「ほんとだっ。行こ、清」 清忠が指差した先の可憐な花を喜々として見に行く。そんな事をしながら歩くもんだから、中々前へ進めなかった。 大半の人は先に行ってしまったみたいだったけど、中には俺達のように、のんびりと登ってる何人かの姿が前の方に見える。 でも、俺達のクラスが一番最後に出発したのもあって、どうやら俺と清忠が最後尾のようだった。 朝には雲一つなく晴れ渡っていた青空が、時間が経つにつれて、少しずつ黒い雲に覆われてきた。 風が吹くと、汗ばんだ身体にひんやりとして冷たい。 「凛ちゃん、少し急ぐよ。天気が怪しくなってきた」 「そうだな。早く行こう」 すたすたと軽快に登って行く清忠の後ろを、俺は小走りで付いていく。 ふと、山道脇の草むらに、何かが動いたような気がして立ち止まり、目を凝らして見た。 すると、草の間からにゅるりと蛇が頭を覗かせた。 「わぁっ!」 蛇を見た瞬間、どくんと心臓が跳ねて、俺は大きな声を上げて一歩後ずさった。

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