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第287話 番外編 紅に染まる(終)
俺が「そんなの前から知ってたよ」と言うと、浅葱は「凛…、俺、辛い事があったら凛に会いに来るっ」と抱きついてきた。
その瞬間、背後からゾクリとする冷気を感じて、浅葱が慌てて俺から離れる。代わりに腕が伸びてきて、俺のお腹に巻きついた。
「浅葱、俺の凛に触れるな…」
「…じ、冗談ですってば…。じゃあ…そろそろ鉄様、出かけないと帰りが遅くなってしまいます」
「そうだな、行くか。じゃあな、しろ、凛」
「失礼します、銀様、凛さん」
「ああ、気をつけてな」
「あっ、気をつけてね。俺に手伝える事があったら言ってねっ」
浅葱が、俺達に向かって敬礼するように頭の横に手を当てると、翼を出して一気に飛び上がる。
続いて鉄さんが杏さんの手をしっかりと握り、杏さんが俺に手を振って、翼を広げてゆっくりと舞い上がった。
三つの影が見えなくなると、俺は銀ちゃんに飛びついた。
「どうした?顔が緩んでるぞ」
「ふ、ふふっ。赤ちゃんだって。楽しみだねぇ」
「そうか?おまえは、小さい物とか好きだものな」
「うんっ、絶対に抱かせてもらう」
「俺は、おまえが一番可愛いけどな」
そう言って、銀ちゃんは俺を抱き上げた。
俺は、銀ちゃんを見下ろしてチュッと鼻先に口付ける。
途端に笑顔になる銀ちゃんに、俺の胸がきゅんと鳴った。
「凛」
「なあに?」
「愛してる」
「俺も…あ、愛してる…」
「凛」
「な、なあに?」
「もうこれで、邪魔者はいない。今から凛を愛でていいか?」
「えっ?も、紅葉じゃなくて?浅葱が持って来てくれたの、食べないの?」
「後で食べる。何よりもまず、凛を食べたい」
「俺…好きなのは後で食べるタイプ…」
「ふっ、そうか。俺は、好きなものは一番先に食べる。だから…」
「んっ、んぅ…、ふぅ…んっ」
銀ちゃんが、俺の後頭部に手を回して引き寄せた。強く唇を合わせて、舌を絡め取られ、息が苦しくなるまで貪られる。
銀色に光る糸を引きながら、息も絶え絶えに離れた俺を見て、銀ちゃんが嬉しそうに笑う。
「…どうしたの?」
首を傾げる俺をシートの上に降ろして、そっと押し倒した。そして、俺の頰に手を添えて、うっとりと見つめる。
「凛…、周りの紅葉よりも、おまえの頰の方が、赤く染まっているぞ。とても綺麗だ」
銀ちゃんの言葉に、俺は熱い頰を更に熱くさせる。
どんなに照れる言葉でも、銀ちゃんが言うと似合ってしまう。
銀ちゃんに熱く見つめられて、俺は頰だけでなく身体も熱くさせた。
俺が笑って腕を伸ばすと、銀ちゃんが俺を抱きしめて、頰を寄せて「愛してる」と囁いた。
…終。
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