24 / 353

9(2)

「あっ、う……」  歯を食いしばって、耐える。息が苦しくなってくる。こみ上げる激痛に、吐き気がする。  やがてアウリール側の体力が消耗したことによりそれは止んだが、椛は立ち上がることもできないほどにぐったりと、力なく横たわっていた。 「は、はは……ボロ雑巾みたいだなぁラプンツェル……」 「……、」 「なぁ、ほら……じゃあそろそろやってあげるよ……ラプンツェルの大好きな、あ・れ」 「あ……や、だ……」  息をきらしながらアウリールがしゃがみ込む。先ほど床に置きっぱなしにしていた小箱を椛に見せつけるように開けて、そこから細い金属の棒を取り出した。 「ね……これをおちんちんに挿れられるの、だ~いすきだよね」  鈍く、光る。椛は這うようにして逃れようとしたが、アウリールがそれを許すわけもなかった。乱暴に脚を掴み、グッとそこを開くと、椛のペニスを握る。 「うぅっ……」  急所を握られ抵抗ができなくなった椛は、いよいよ覚悟せざるをえなくなった。金属棒が先端に近づけられ、椛は恐怖のあまり手の甲を噛みしめる。目を逸らすことすらも怖くて、ソレが挿さる瞬間を、その目で見届けた。 「いっ……あぁあッ……!」  尿道に異物を挿れられるのは、初めてではなかった。無理やりではあるが、他の部位と同じように快楽を開発されている。気持いいか、と問われれば否定はできないのだが、やはり快楽よりも恐怖が勝るのだ。 「あっ、う、ぁああ……だして、おねがい、だしてぇ……!」 「は~い、ぬきさしぬきさし」 「あっ、あっ、あっ」  じわ、と熱が解き放たれるような、開放感にも似た快楽が断続的に椛に襲いかかる。それでも、細い、下手すれば尿道を傷つけてしまうような金属棒がにゅるにゅると挿入を繰り返され、脳がソレを激しく拒絶している。身体で感じる快楽と、脳で感じる恐怖が交じり合って、椛にかかるストレスはとてつもないものになっていた。  喘ぎながら泣いて、恐怖のあまり強張る身体には負荷がかかり、時間が経つごとに椛は疲労してゆく。泣き声は枯れはじめ、瞳は腫れ上がり身体に限界が差し迫る。 「やめ、て……おね、がい……やめて、くだ……さい……」 「ふんっ、満足に声もだせなくなったのか、つまらない……じゃ、最後にそのケツをたんと楽しませてもらいましょうか」 「……っ、ま、って……アウリール、さま……ぬいて、抜いてください……!」 「これ挿れたままだと射精(だ)せないだろう? いいじゃないか……すぐイケナイの、ラプンツェル大好きでしょう?」 「まっ……こわい、……こわいです……!」 「うるせぇ黙れ肉便器が!」  思い切りビンタをされ、椛は黙らざるをえなかった。アウリールはそそくさと服をぬぐと、すでにたちあがったソレを椛のソコにぴたりとあてる。金属棒がささったままの椛のものがびくりと震えるが、アウリールは気にもせずに一気に奥まで突っ込んだ。 「――あぁああっ!!」  アウリールはぐいっと椛の太ももを掴むと、ガツガツと腰を動かしはじめた。椛のことなど何も考えていないように、自分の快楽のまま、乱暴に。それでも十分に調教された椛の中はそれを快楽と受け止めていて、椛の口からは甘い声が漏れだした。 「はぁっ、んぁっ、やぁっ」  心の中は、不快感と恐怖でいっぱい。それなのに身体は気持ちいいと言っている。悲しくて、悔しくて、椛は泣くことしかできなかった。身体を突かれるたびに涙の雫が飛び散る。視界が歪んで、何も見えない。  それでも快楽は蓄積していき、椛のものは膨れ上がる。吐き出すことを許されないそこは、苦しそうにかたくなって、たちあがって、身体を突かれるたびに揺れ動いた。じゃらじゃらと椛を繋ぐ鎖の音と、椛の枯れた声が虚しく響いている。 「あ、あ、あ、」 「ラプンツェル、ラプンツェル……! 嗚呼なんて憎たらしい子だ……あんなに愛したのに、こんなに愛しているのに……どうして私を裏切った! 許さない、おまえを私は絶対に許さない!」 「あ……、あう、りーる……さ、ま……」  そのアウリールの表情を見て、椛は目を見開いた。  ……彼は泣いていた。悲しそうに、泣いていた。 ――アウリールは、本当に椛を愛していたのだ。愛し方だって、間違っていない。確かに椛の身体を痛めつけたりもしたが、それも椛は受け入れていた、むしろ悦んでいた。 ――結局は、主役に嫌われたものが悪役になるのだ―― 「……アウリール、さま……どうして、ないて……」 「五月蝿い、黙れェこのクソビッチが! どこにでもいきやがれ!」  金属棒を一気に引き抜かれれば、そこからぴゅっと精液が飛び出し椛の胸にひっかかった。それと同時にアウリールも椛の中に吐き出した。ハァハァと息を荒げ、その瞳孔の開いた瞳で椛を見下ろすアウリールの表情は、恨みに満ちていた。 「――さあ、いまからいくぞ、ラプンツェル……」 「……、僕を、売りに……」 「ああそうさ……塔の上のお姫様から……はは、売春婦だ……は、はっはっは……ザマァねェなァ! なんという凋落っぷりだ……惨めだな、ハハハハハ!!」  高笑いするアウリールにからは、生気が抜けてるかのように感じた。椛は呆然とそんな彼を見上げて、わけもわからず、ただつぶやいた。 「……ライン……助けて……?」

ともだちにシェアしよう!