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「やあ、ラプンツェル」
どんなにラインヴァルトとの幸せを過ごしてもやってくる、アウリールとの時間。ただそれも今日で終わりなのかと思うと、椛は清々した気持ちになった。ラインヴァルトと出会ってから、アウリールとの性交が辛くてしかたなかったから。今日もやってきたアウリールに、さよならと言わんばかりに椛は白々しい笑顔を向ける。
「……アウリール様、お待ちしておりました」
「ふふ、ラプンツェル……今日は一段と美しいね」
「……そうでしょうか」
アウリールはいつものように部屋の隅から道具を引っ張ってくる。もう最後なんだしなんでもしてくれと椛がぼんやりとその様子をみていると、アウリールが手に持ってきたのは、小さな箱。
「あ……」
「ラプンツェルはこれが嫌いだったね。何度やってもこれだけは気持ちいいって言ってくれなかった」
「そ、それ……こわい、から……最近ずっと、やってなかったじゃないですか……それ……」
「そうだね~ラプンツェルも楽しそうじゃないし面白く無いかな~って。うん、でもいいんじゃない? 最後なんだし、一番キライな奴、やってあげる」
「……え」
最後? アウリールは今そう言っただろうか。椛は息を詰め、アウリールを凝視した。バレた? 何故?
「ねぇ~ラプンツェル」
「あっ……!」
アウリールは箱を床に置くと、椛の両脚を掴んでそのまま椛の頭の方へ持っていく。秘部が思い切りさらけ出されて、椛は思わず小さな悲鳴を上げた。後孔の入り口を指先でとんとんと叩かれて、ぎゅっと目を閉じる。
「この中に、な~にが入っているのかな~?」
「……!」
「誰の種かな~誰の精液ぶちこまれたのかな~?」
「あ、アウリール様……」
ゾッと悪寒が椛を貫いた。アウリールの瞳に宿る憤怒の色と微笑む口元のあべこべが、非常に気持ち悪かった。動物的本能にも近い、危険への恐怖が椛を支配する。
「僕がわからないとでも思う? ラプンツェルの中に、他の男の精子がいることぐらい、すぐにわかるよ」
「……あ」
「ねぇ、ラプンツェル、ひどいね、ひどいね?」
「ご、ごめんなさ……」
「アァ!? ごめんだァ!? 巫山戯たことぬかしてんじゃない! 僕を裏切ったんだろうが! 誰がおまえをここまで育ててきたと思っている、この恩知らずの雌豚が!!」
アウリールが椛の細首を思い切り掴んだ。そして、ぎりぎりと締め付ける。骨が折れてしまうのではないかという勢いで、強く、強く。
「う……ッ、あ!」
息が出来ない。ミシミシと嫌な音が頭に響く。無理矢理に息をしようとすればひっくり返った声が漏れるだけで、余計に苦しくなる。唇の端から唾液が漏れ、視界が歪み、椛の意識が飛びそうになったところで、アウリールはようやく手を離す。
「おまえ……許さない、許さないぞ……僕がどれだけおまえを愛したと思っているんだ、なぜソレがわからない!? 他の男にホイホイついていこうとする!? どうせ若くて見栄えの言い男なんだろう!? この淫乱が!! こんな老いぼれのセックスじゃあ満足できないよなァ!? 売女!! ああそうだ、貴様にはこんな贅沢な塔なんかより、薄汚れた売春宿がお似合いだよ、クズが!!」
「……っ、違う、彼は、……僕はそんな理由で彼を好きになったんじゃない……!」
「黙れ!! どんな風に男を誘惑したんだ? ああ、嘆かわしい……そうだ二度とそんなくだらないことができないように手足切り落としてダルマにしてやろうか、僕だけの性欲処理人形にしてやろうか、アァ!?」
「……ひっ……」
「はっ、冗談だよ……もうおまえなんかに興味はない。僕の怒りが晴れるまでおまえを嬲ったら、あの有名な売春宿に売り払ってやるよ、アソコはたしか病気が蔓延しているんだったかなァ? はっはっは……汚い貧乏人どもに毎日手ひどく抱かれながら病死してしまえ、このケツ振り野郎が」
怯える椛を、アウリールは思い切り蹴った。何度も何度も。椛は身体を丸めて身を守ろうとしたが、あまりにもしつこく蹴ってくるものだから、身体の内側から熱をもったように痛くて、涙をこぼしてしまった。
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