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「さぁこちらのグレーテルちゃんは、新人ドールです! 初回で勝つのは難しいカナ? でも皆さん応援してあげてくださいネ~!」
「勝つ?」
「このショーは一種のゲームみたいなものだ。あの二人の少年で戦って、その勝敗を見守るのがまた面白くてな」
「戦うって……何をして?」
ヘンゼルがヴィクトールとドクターの言っている言葉の意味がわからずにいれば、二人の少年の間に一人のバニーガールが立つ。
「ハァイ! それでは注入~!」
「ゲッ、なんだよアレ……」
バニーガールの手にあるものに、ヘンゼルは目を白黒させた。見覚えがあるようでないもの。一本のデコボコとした太い棒のようなものの両端に、亀頭がついている。……所謂、双頭バイブというものだった。今朝バイブで虐められたばかりのヘンゼルはそのグロテスクな物体をみて身震いをしてしまう。
二人の少年の距離が縮められる。無抵抗の二人は、大きく開いた秘部を向かい合わせにされても動こうとはしなかった。バイブの先端が、二人のアナルに近付けられる。
「あの二人で「イかせ合い」をするんだ。あのバイブと、あとフリーの手をつかって」
「……はぁ」
「ちなみにあれ、ステージにあがる前に強力な媚薬をいれられているから、相当敏感な体になっている。先に失神したほうが負けだ」
「……イって失神とかすんの?」
「私特製の媚薬をなめないで~!」
「……へぇ」
ドクターの話を聞いているヘンゼルの様子は「ドン引き」といったものだった。全身の血がひいていくような悪寒を覚えて、口元もひきつってしまう。何が面白くてこんなものをここにいる客は見に来ているというのか。
「……っていうか、ステージにあがっている……ドール?もそんなこと本気でやったりするの?」
「もちろんさ。負ければペナルティ、勝てばポイントがもらえるからね」
「……は?」
「……ヘンゼルくん、私はこのことを説明するためにここにいる。ここからよく聞いて欲しい。キミも、あそこに立つことになるのだから」
ドクターはステージを指さして言う。
「あのショーに出るドールは特別だ。このショーで勝ちポイントと負けポイントを得ることができる。一回のショーにつき、勝ちか負けを1ポイント得ることができるんだけど……勝ちポイントを100点貯めればどんな願いでも私達が叶えてあげる、負けポイントが10点溜まってしまえば……殺処分だ」
「殺……処分!?」
「そういう条件でもつけなければ本気でやってくれないだろう? あ、ちなみに殺す方法は改造人間のエサになってもらうって形ね。まあでも、私が言いたいのは負けたときの話じゃなくてね」
「え……」
「君がドールになって、あの舞台で本気で戦って、100ポイントとれば……君はなんでも願いが叶う。グレーテルくんとここから逃げることができるんだよ」
「……っ!?」
誰がドールになんてなるか、あんな辱めをうけてたまるか、そう思っていたヘンゼルの心が、ここで一気に揺らいだ。椛を確実に救いたいのならば……早いところドールとして認めてもらい、あの舞台にたって、「ショー」をしなければいけない。
「……椛も、俺と同じようなことをされて、ドールとして認めてもらってあの舞台に立ったのか?」
「グレーテルくんは、もともと体を売って商売していたでしょう? 抱かれるための体はできあがっていたし、相手を悦ばせる術もある程度身についていた。結構すんなりドールになったかなぁ」
「……椛の、願いは?」
「君と同じだよ。君と一緒にここを逃げること……なんだけど、それは叶うかねぇ」
「?」
「ショーを見てみればわかるよ」
再びショーに目をやれば、二人の少年のアナルにバイブを挿しているところだった。ヘンゼルに使われたものとは比べものにならないくらいに太いそれは、ずぶずぶと躊躇いなく少年の中に入っていく。
「ひゃあぁあっ!」
「んっぁああっ!」
がたがたと身体をひくつかせながら弓なりに体を反らせる少年2人を気にもせず、少年の座る椅子をバニーガールたちが押していく。やがて、アナルはずっぽりとバイブを呑み込んで、2人は大きく開脚した秘部同士を密着させた。
「椛、あれ大丈夫なのか……?」
異常としか思えない光景に目眩すらも覚えながら、ヘンゼルは椛のただならぬ様子が気になった。天井を見ながらぼんやりと目を見開き、ビクンビクンと細かい痙攣を繰り返している。
「ハァイ! 準備は整いましたネ!? ではではいよいよショーのスタートです! Ready~GO!!」
「ひゃあぁあッ!」
「ふぁっ、ぁあぁ!」
バニーガールがバイブのスイッチを入れると、二人が同時に啼きだす。身体を反らせれば股間が相手に強く当たってよけいにバイブが奥に入り込む。そして、また啼く。しばらく二人はもじもじと身体を動かしてくねらせて、バイブの刺激に耐えていた。
しかしやがて、椛ではないほうの少年が、ぐっと身体を起こす。
「はぅっ……!」
突然相手が身体を起こしたためにバイブが大きく動いてイイところに当たってしまった椛は、大きく身体を震わせて喘いだ。相手の少年は、快楽で涙目になりながら、身体を反らせている椛の両方の乳首をつまむ。そしてぎゅうっと強く引っ張りながらぐりぐりと指先をこすり合わせるように乳頭を刺激してやった。
「ふぁ、ぁああっ、やあッ……!」
椛はアナルと乳首両方に与えられる快楽に為す術もなく、ただひんひんと啼くことしかできない。そうしているうちに、相手の少年がゆっくりと腰を引いて行く。そしてある程度引いたところで、思い切り椛の尻に自分の股間を突き付けた。
「あぁッ!」
「んひゃあっ……!」
双頭バイブということで相手に腰を打ち付ければ自分にも快楽がかえってくる。相手の少年は椛を突いた瞬間に、自分も啼いた。
「あっ、ああっ、あ、あ、」
「ひぃ、んん、やぁっ……」
少年はかくかくと身体を揺らし、椛を責め続けて、そして自分も喘ぐ。椛は抵抗も出来ずにただ、大袈裟なくらいの嬌声をあげ続けている。
「……椛、なんでなにもしないんだよ? っていうか……なに、あれ?」
「だから言ったでしょう? 椛くんは100ポイントなんて到底とれっこない。あのとおり、勝つことなんてできないから」
「……勝てない?」
「身体が敏感すぎて、責められたらもう責め返せないんだよ。されるがまま。ありゃあ負けポイント10点もあっさりいっちゃうかもなぁ」
「えっ……10点ってたしか」
「そうだよ。負けが10点で殺処分。だからね、ヘンゼルくん。君はグレーテルくんが10回負ける前にドールになって100回勝たなきゃだめだよ」
「は、はぁ!? 無理に決まってるだろ! そもそも普通に考えて椛が10回負ける前に俺が100回あれに出ることすらできねぇだろ」
「それは団長が考慮してくれるって言ってたねぇ。君、団長のお気に入りだから」
「……っ」
ヘンゼルはぐっと押し黙る。ステージの上の常軌を逸した交わりをみつめ、目眩を覚える。
「あっ、あっ、あっ、あっ、」
賑わう観客、異常なステージ。今にも気絶しそうな椛を、ヘンゼルは震えながら見下ろす。椛が自分のためにあんな痴態を晒しているのだと思うと、胸が苦しくなった。そして同時に、自分もあれと同じことをしなければいけないのかと頭が痛くなる。
もともと自分に拒否する権利はない。しかし、椛を救いたいのならば、自ら積極的にドールとなりあのステージでパフォーマンスをしなければいけない。積極的に、やれと。男に抱かれ、身体がそれに慣れるように自ら性行為を悦んでやれと。
「……ッ」
唇を噛み締め、絶望感に打ちひしがれた、そのとき。ホール全体が歓声に満ちる。
「あ……」
「あー、あー、負けポイント1点、だね」
椛が、ぐったりと椅子の背もたれに身体を預け、細かく痙攣している。相手側の少年が目をひん剥いて喜びの声をあげる。
「勝者は~マイケルくん~! おめでとう! 皆様拍手!」
ショーが始まってから数分。あっさりと負けポイントを得てしまった椛。これは椛が10点獲得してしまうのは、時間の問題だと、ヘンゼルも理解する。
「今夜も団長に抱かれるんでしょう? もっと積極的にエッチに取り組みなよ? そうしないとドールにはなれないよ」
「団長……」
そうだ、今夜もヴィクトールと。ステージの上でおどける彼を見下ろす。
「……あいつに媚を売ってケツ振れってか。糞食らえだな」
「……?」
どこか陰鬱に吐き出したヘンゼルを、ドクターは不思議そうにみつめた。もっとキャンキャンと反抗すると思ったのに、思い悩んだようにそう言ったヘンゼル。
そう言ったきり塞ぎこみ、何も言葉を発さなくなってしまったヘンゼルは、ショーが終わるまで再度ステージをみることはなかった。
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