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*** 「んっ、んっ……あ、~~ッ」  中に吐出され、ヘンゼルはそのままくたりと体の力を抜いた。ヴィクトールは、全身の熱を冷ますように深い呼吸をするヘンゼルに覆いかぶさり、顔にキスの雨を降らせる。そして、くすぐったそうに目を閉じるヘンゼルの髪を愛おしげに撫でた。 「ヘンゼルくん……気持ちよかった?」 「……ん、」 「すごく可愛い声でてた。なんかまだ足りないって思っちゃうくらい、ヘンゼルくん、可愛い」 「……する?」 「え?」 「もう一回」 「!」 「……冗談。疲れた。明日も早いんだろ、寝る」  破壊力満点のお誘いにあっさり陥落しているヴィクトールをめんどくさそうに見つめると、ヘンゼルはそのまま布団を引っ張りあげて潜ってしまう。自分の首元に顔を埋めて寝ようとしているヘンゼルにどぎまぎとしながら、ヴィクトールはギリギリで理性を保って、ゆっくりと、ヘンゼルを抱きしめた。 「ねえ、ヘンゼルくん」 「何」 「……最近、体、敏感になってきたね」 「……うるさい」 「僕に触られているから?」 「……」 「……あのね、」  ぎゅっと背中を強く抱きしめられたことに、ヘンゼルの答えを悟ったヴィクトールは、嬉しさに心が震えるのを抑えながら、静かなトーンで言葉を紡ぐ。 「そろそろ、ドールになってもらおうと思うんだけど」 「えっ……」  ヘンゼルはパッと顔をあげて小さく驚きの声を発した。その瞳には、僅か、不安の色。ドールになって椛を助けなければ、ドールに早くならねば……そうは思っていても、いざ、ドールになるとなるとやはり怖いのだろう。何度もその目でショーをみてきているのだから。 「……僕はできればヘンゼルくんにドールにはなってほしくないんだけど……ヘンゼルくんもはやくドールになって弟とここを出たいっていうし、それに、ルールだから。僕がつくったルールとはいえ、ここまで大きな組織となると僕の私的な理由でルールを無視することはできない」 「わ、わかった……大丈夫」  ヘンゼルはまたすぐに俯いてしまう。震えるその手に、ヘンゼルのドールになることへの恐怖を感じ取ったヴィクトールはぎゅっとその背を抱きしめる。 「……あのさ、ヴィクトール」 「ん?」 「ドールになったら、どんな生活になるの。ドールって夜は、団員と一緒に寝たりするのか?」 「いや……普通、ドールはドールだけの部屋で夜を過ごすよ」 「……俺も、ドールになったらそこにいくってこと?」  質問の意図を感じ取ったヴィクトールは、そっとヘンゼルの頬を撫で、顔を覗きこむ。目が合うと、その瞳が微かに揺れた。 「……もしかして、僕とずっと一緒にいたいって言ってる?」  尋ねれば、ヘンゼルはその目を細め、ヴィクトールの手に自分のものを重ねた。そして、諦めたように笑って、言う。 「……そう言ったつもり」  トス、なにかが心臓に突き刺さったような錯覚を覚える。かあっと全身の血が茹だって、心臓がばくばくと高鳴って。ヘンゼルの頬に触れている手が、熱くてたまらない。 「そこはちょっと……考えてみる。僕も、ヘンゼルくんと一緒にいたい」 「ん……そう、じゃあおやすみ」 「えっ」 「もし俺もほかとドールと同じ部屋にいくなら、今日はまだ寝るつもりはなかったけれど」 「どういうこと?」 「最後の夜に、一晩中抱いてもらおうと思っていた」 「……っ」  うわ、なんて変な声が漏れそうになるのを、ヴィクトールは寸のところでとどまった。ここのところのヘンゼルの(ほぼ)ストレートな言葉は心臓に悪い。あのセックスのあとからヘンゼルはヴィクトールを突っぱねることもなく、素直にヴィクトールへの好意を示してくる。ただ「好き」とだけは言わないけれど。それは恐らく彼の最後の砦で、それを言ったら彼が壊れてしまうのだろう。だから、ヴィクトールも無理にその言葉を引き出そうとはしない。ヘンゼルの気持ちは十分にわかっていた。……今だけでも幸せだ。 「今の……ちょっとキたんだけど……ヘンゼルくん、ちょっとだけ……しないから、触っちゃだめ?」 「……俺は疲れたから動かないけど……どうぞ、ご自由に」 「ありがとう、嬉しい」  ヴィクトールはオンナ役の疲労は知らない。だから、疲れたと言うヘンゼルに無理強いはできなかった。ただヘンゼルの言葉にどうしても我慢ができなくなって、その一糸纏わない肌に手のひらを滑らせる。彼の肌はすべやかで、触っているだけでも気持ちいい。背中のなめらかな凹凸を楽しむように、ゆっくりと、触る。 「んっ……」  ぴく、とヘンゼルが身動いだ。口元に手をあて、はくはくと息をする。ヴィクトールの興奮を煽らないようにしているのか、声を出さないようにとこらえている姿がなんともいじらしい。再び自分の首元に顔を埋めているヘンゼルが、どんな顔をしてそんな愛らしいことをしているのかと、ヴィクトールは気になってたまらない。 「……ヘンゼルくん、顔、見せて……」 「むり……」 「お願い」  ヴィクトールはくい、とヘンゼルの顎を指で持ち上げる。そうすれば、頬を染め、伏し目がちに瞳を潤ませた、悩ましげなヘンゼルの顔がヴィクトールの視界に入ってくる。下腹部が熱くなってしまう。もっとこの顔をぐちゃぐちゃにしたい……でも、だめだ。ぎりぎりの理性を働かせ、ヘンゼルの臀部へ伸びた手をぴたりと止める。 「胸、触っていい?」 「……やだ」 「最近はこっちも感じてくれているもんね……ちょっとだけ、ね」 「……ぁ、」  身体のあちこちを触りたい。背中の感触をたっぷりと楽しんだヴィクトールは、こんどは両の手をヘンゼルの胸にあてる。大きく全体をもみほぐすようにぐるぐると手のひらを回してマッサージしてやれば、ヘンゼルはきゅっと唇を噛んでその手つきを見つめている。 「触れば触るほど、ここ、感じやすくなるんだよ……僕がここいっぱい触って、ヘンゼルくんのここ、可愛くしてあげる」 「やめろって……そんなの……」 「本当に、嫌?」 「……」  黙り込んだヘンゼルに、ヴィクトールは微笑みかける。そしてゆっくりと、指先で両方の乳首に触れ……きゅっと摘んだ。 「んっ……!」  ぞわぞわとした感覚に、ヘンゼルは目を閉じて身体を強ばらせた。手の甲を噛み、ヴィクトールの手の動きを見守るようにうつむき、迫り来る快楽に耐えようとする。嫌がってはいない……それをヘンゼルの表情から確認すると、ヴィクトールは少しだけ強めに刺激した。こりこりとそこをこねまわしていくと、小さく控えめだったそこがぷっくりと膨らんでゆく。芯をもってかたさを増したそこはさらに敏感になって、ぎゅうっと引っ張られると、思わず、胸を強調するように身体を反らせてしまう。 「可愛い……」 「んっ、んっ……」 「もっと触って欲しそうだね……身体、もじもじさせちゃって」 「……この、」  ヘンゼルはすっかり濡れた目で、ヴィクトールを睨みつけた。ほかのところは触らせないからな、そんな目だ。これ以上されたら、また最後までやってしまうと想像してしまったのだろう、流石にそれは嫌だったらしい。 「……体起こせ」 「え?」 「起こせ」  じっとヘンゼルに見つめられて、その意図もわからずヴィクトールは起き上がった。めくれ上がった布団を、ヘンゼルは後ろにはけると、ヴィクトールの正面に移動する。 「おまえ長いから最後までやってたら俺の身体がもたない」 「……ごめん」 「……だから、これで、勘弁して」  えっ、とヴィクトールが小さな声を発するのも気にせず。ヘンゼルはヴィクトールの腹部へ顔を埋め……そして、たちあがりはじめていたペニスをそっと掴んだ。

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