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lost memory1
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「ウィル! こっちこっち!」
「待てよ、椛! はしゃぎすぎだって!」
「だって、今しかないんだよ! こうして遊べるの! ウィルと一緒にいるときしか、こうして自由に笑えないでしょ!」
少年たちの裸足が漣を蹴って、きらきらとした飛沫が舞い上がる。磯の香り、差し込む太陽に火照った身体を冷やす風。
「世界に、俺たち二人だけだったらいいのにね」
君の笑顔に、世界が彩られてゆく。光のなかに、青い海の煌きのなかに、僕たちの小さな世界が存在した。どんな呪いに蝕まれようと――君と一緒なら、僕は幸せだった。
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