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「――……」
目を覚ますと、ウェンライトに抱かれてベッドに横になっていた。そっとウェンライトの腕をどかし、ベッドを這い出る。朝を迎えれば脚が痛むことはないのだが、昨晩あまりにも酷くされたからか、ずきずきと鈍い痛みがとれない。しかし歩けないこともない痛みだったため、ウィルは立ち上がりクローゼットから服とタオルをとりだすと浴室へ向かおうとした。
「……ウィル、さん」
「……あぁ、起きたか」
ウェンライトも目を覚ましたようだが、昨晩のことを思い出したのかさっと顔を青ざめさせていた。ガバッと起き上がってベッドの上で頭を伏せて叫ぶ。
「……す、すみませんでした……俺、昨日なんてことを……!」
「……酔ってたんだろ」
「え、えっと……」
「……シャワー浴びてくるから着替えていて。そうしたら先、出てっていいから。じゃあ、また基地で」
おろおろとしている様子をみれば、昨晩のことを悔やんでいるようで戸惑っているようで……そんな風にみえた。となれば昨日は正気じゃなかったのだろう……そう思ってウィルは昨日のことはお互いになかったことにしたほうがいいと、そう思った。……というよりも、正直そのことはどうでもよかった。
浴室まで言って鏡を見ると、目元に酷い隈ができていた。今、ウィルの頭のなかはオーランドが満たしていた。それこそ、自分が強姦されたことなどどうでもよくなるくらいに。
情けない、そう思った。いくら昨晩、酒に酔っていて、体の痛みに精神まで弱っていたからといって――オーランドのことを引きずってしまっていた。恋に呑まれるような年齢でもあるまいに、いつまで初恋の相手を想っているというのか。くだらない、自分の立場を理解しろ――目元を泣きはらした自分が映る鏡を、ウィルは睨みつけた。
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