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夢1
外から月光と桜の花弁が、部屋の中に入ってくる。ゆるゆると朧な視界のなか、桜の花弁は翻るたびに月光のせいで白に、桃色に……ころころと表情を変えてゆく。
「あっ……!」
「どこを、みていたんですか」
僕が一瞬よそ見をしてしまったせいか、群青 は拗ねたような顔をした。申し訳ないと思いながらも、少しだけ可愛いと思ってしまう。思わず僕が吹き出すと、群青は強く、最奥を突いてきた。
「あ、ぁあッ……!」
「俺から目を逸らさないでくださいよ……俺のことだけをみて」
「んっ……ご、ごめん……あ、まって……ぁあっ……ちがう、違うよ。桜の花弁が……」
「桜……?」
なんとかわけを話せば、群青は畳にのっていた一枚の花弁をみつめた。そうすると、ちょっとだけ不機嫌そうだった表情が和らぐ。
「……貴方は、相変わらず桜が好きですね」
群青は僕の頬を撫で、目を細めた。そして、そっと、口付けてきた。
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