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*** 「こ、ここは……」  花一匁を歌いながら鳥居を抜ければ、そこにはあまりにも美しい世界が広がっていた。満開の桜が咲き乱れるなかに、屋敷がたっている。 「綺麗でっしゃろ? さあおいない。みんなあんたを待っとるよ。」 「みんな……?」 「あんたを愛しはる人々どすえ」  濡鷺が、椛の手をひいて屋敷の中へ入ってゆく。少々古いが、木の匂いが香り立つ、趣のある屋敷。奥へ奥へと進んで、最奥の襖を濡鷺がぱしりと開けるとーーそこには、様々な生き物たちがたくさん待っていた。 「いらっしゃい、椛!」 「え……!」  明らかに人間ではない者たち。妖怪だ、と椛はすぐにわかったが、彼らを怖いとは思わなかった。彼らの椛を見つめる眼差しは、優しく、慈愛に満ちていたから。 「さあおいでおいで、こちらへ!」  わらわらと椛のもとに集まって、妖怪たちは椛を部屋の中央にいざなう。そして椛を座らせると、皆、椛に口付けを落としたり撫でたりしながら、口々に囁いた。 「ああ、愛しい子。なんて可愛らしい!」 「椛、椛! 君は素敵だよ!」 「もっと君の色んな表情がみたい!」  戸惑いながらも、椛は妖怪たちの言葉に心を動かされた。そんなこと、今までほとんど言われたことがない。言われたかったのに、誰も言ってくれない。妖怪たちは椛が望んでいた言葉をくれたのだ。椛は嬉しくなって、笑い出す。  濡鷺は椛の前に腰を下ろして、その様子をにこにこと眺めていた。妖しい瞳をゆっくりと細め、甘い声で囁く。 「幸せどすか? 椛」 「……うん、誰もこんなこと、あっちでは言ってくれなかったのに……!」 「そらよぉございましたなぁ。ほなもっと幸せにしいやあげる。心やけほななくて、体も幸せにしいやあげるよ」 「心だけじゃなくて、体も……?」 「そうどす。とっても気持ちええことをしいやあげる。」  ふふ、と濡鷺は笑ってぱんぱんと手を叩いた。そうすると、椛を囲っていた妖怪たちが椛の着物を脱がせ始める。そしてあらわになった素肌をいやらしく撫で上げられて、椛はかあっと顔を赤らめた。 「ちょっ……気持ちいいことって……」 「まぐわい、やね」 「ま、待ってください……そんな、はしたない……!」 「なんを言うとるのどすか? あんたが気持ちよさそうにしたはるトコをみて、わいらははしたないなんて思いまへん」  ぐ、と脚を後ろから抱えられ、秘部を丸見えの状態にされる。獣の姿をした妖怪が椛の脚の間にわり入って、そこをぺろりと舐め上げた。 「ひゃっ……」  椛が頬を紅潮させ、身をよじる。しかし獣は遠慮無く、そこをぺろぺろと舐め続けた。舌先で周辺を円を描くようになぞりあげたり、舌の腹をずるずると押し付けるように全体をなめたり。じわ、とそこから甘美な快楽が広がっていき、椛は堪らずため息のような吐息を漏らす。 「はぁ、あぁ……ん……」 「可愛らしい声。ねえ、椛。奥のほう、むずむずしてこない?」 「……お、く……?」 「おしりのなか。ひくひくするでしょう?」 「う……、」 「気持ちいいってことだよ。もっともっと気持ちよくしてあげる。もっと声を出して」  他の妖怪たちも、椛の身体をじっとりと愛撫しはじめた。乳首をこねるようにして慰めたり、陰茎をしごきあげ、先をくりくりと弄ったり。秘部をなめていた舌も、ぐりぐりと中に突っ込むようにして激しさを増している。 「あぁっ……や、だめっ……んっ、」 「可愛いね、椛、可愛い」 「く、ぅ……ッ、あっ……へん、なんか、変……くる、なんかくる……だめ、だめ」  椛の中に、ぞくぞくと波が押し寄せるような感覚が迫り来る。未知のそれに、椛は怖くなってぷるぷると首を振った。はあはあと呼吸の感覚が狭くなってゆく、全身から汗が吹き出てくる。 「はーい、やめ」  もうだめ……そう頭の中が真っ白になったとき、濡鷺が立ち上がって近づいてきた。そうすると妖怪たちは名残惜しそうにしながらも、ばらばらと散ってゆく。身体を支えるものがなくなってぱたりとその場に倒れ込んだ椛に、濡鷺が覆いかぶさった。 「気持ちよかったどすか? えらい可愛らしい声がでとったね」 「……ぁ、……きもち、よかった……」 「そら良かった。でもイクんはまだ早い」 「……え、」 「初めてん「イク」は僕が教えてあげる。僕があんたをイカせてあげる。椛、最高に気持ちよおしいやあげるよ」  ふふ、と濡鷺が笑った。彼の瞳がゆらりと光る。獲物を捕らえた蛇のようなその瞳に、ゾクゾクとした。  濡鷺が椛の首筋に唇を這わせる。そして軽く吸い上げ、ひとひらの鬱血痕を咲かせた。 「ぁあッ……!」 「気持ちよろしおすやろ? 僕に触れられると、どないな人やて蕩けてしまうからね」 「ん、……ぬれ、さぎは……一体なんの妖怪……」 「僕は、人ん想いん集合体や。悔いを残しや死んだ人間ん魂が集まってでけた妖怪」  どんな願いだって叶えてあげる――そう言った濡鷺は、愉しそうに笑った。大量の念が集まって生まれた、濡鷺という妖怪。人の心の内にある欲望を引き出し、それを叶えてみせる。それは……「この行為」にも効果があるのか。ただ唇で触れられただけで、椛は強烈な快楽に引きずり込まれてゆく。  妖怪たちに解された身体を、濡鷺がゆっくりと撫で回す。そして、ひくつく孔に、熱をあてがった。 「待っ……あ、う……」 「どもない、痛くない。優しくしはる。愛しいやあげる」 「ふ、ぁああっ……!」  ず、と熱が入り込む。びくっ、と身体が大きく跳ねた。椛のたちあがったものから、白濁が飛び出してしまう。  目の前が真っ白。奥まで熱くなって、下腹部全体が震えている。濡鷺が静かに抽挿を始め、腰を打ち付けているのに、身体全体がふわふわとして突かれているという感覚がわからなくなる。突かれるたびに椛のものからぴゅうぴゅうと精液がとびだして、とろとろになる。全身が性感帯になったようだ。がくがくと揺さぶられ、意識が飛びそうになって、声がおさえられない。 「あぁっ、ぁ、ん、ぁあっ」 「可愛いね、なんて可愛いらしいやろう」 「ふぁ、ぁあ……あぁあ、ん」  気持ちいい、気持ちいい……。  椛は濡鷺にしがみついて、意識をつなぎとめることに必死だった。愛をささやかれるたびに胸が満たされて、涙が溢れ出てくる。 「濡鷺……もっと、もっと……」 「椛……」 「あっ……あ、あっ……!」  ぱちん、と何かがはじけたような感覚。大きくしなった椛の身体を濡鷺はぎゅっと抱きしめた。これが「イク」という感覚だということを、椛は直感的に感じ取る。愛されながら知った「イク」という感覚は、椛のなかに強く刻み込まれた。もっともっとイきたい。気持ちいいことして欲しい。愛して欲しい。ふつふつと沸き上げる欲望にくらくらとしてきたとき、濡鷺が唇を重ねてきた。 「はぅ……」  椛がぐったりと横たわる。身体は限界に近いというのに「もっと欲しい」と視線でせがむ椛に、濡鷺は優しいまなざしを向けた。体位を変えてもう一度イかせてあげようと身体を起こした濡鷺は――は、と弾かれたように顔をあげる。 「もう来やはったんか。早いなあ」  く、と吐き出すように笑った濡鷺は、自身を椛から引き抜くと服を整えだす。名残惜しげに手を伸ばしてくる椛の頭をぽんぽんと叩くとにっこりと微笑んだ。 「お客はんがおこしやすしもた。ちょいお出迎えしいやくるね」 「お客さん……?」 「可愛い犬どすえ。僕ん大好きな犬」  濡鷺は立ち上がると、散り散りになっていた妖怪たちを再び集め、椛を可愛がるように言った。そうすれば妖怪たちは椛の身体に群がりだし各々に弄りだす。 「あっ……ひゃあ……濡鷺……ぁあん、濡鷺の、はやく欲しい……はやく戻ってきて……あぁっ」 「あたり前どすえ。ええ子にしいやいよし」  濡鷺が軽い足取りで歩き出す。きらきらとした着物を翻して歩く様子は実に愉しそうだった。部屋をでて、襖をしめると、とたんに大笑いをしだす。 「ふ、は、ははは! 憐れな群青。僕ん陣地に来やはったからにはただでは返さへん。苦しんで苦しんで、可愛らしい顔を僕にみせてくれ! 最高ん玩具やな、あんたはんは!」  それはそれは愉しそうに、身を捩り、腹を抱えながら笑ったのだった。

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