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教会についてシャワーを浴び終えたメルは、このまま寝てしまおうかどうか悩んだ。ベリアルとトレーシーの関係が気になるところだが……聞いたところで何になるというわけでもなく。というよりも、今は一人になりたいという思いでいっぱいだった。ベリアルが何を思って襲ってきたのかは想像がつかないが、あんなふうに強姦されかかけたのは初めてで、気分が悪かった。
リビングを抜けて部屋にいこうとしたとき、テーブルについていたトレーシーが振り返る。
「……メル」
「……ん」
「しばらく、この教会の外にでるのを控えなさい。もしかしたらまたあの悪魔が襲ってくるかもしれない」
「……わかった」
穏やかな口調で言われて、少しだけほっとした。先ほどのトレーシーがあんまりにも怖かったから。
教会の外に出れないということはノアに会えないということになるが……しばらくの我慢かな、とメルはため息をつく。トレーシーに心配させるわけにもいかない。
「おやすみなさい、義父さん」
ちょっと哀しい。早くノアに会いたい、そう思ってメルは部屋に向かった。
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