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戦闘訓練を行う部屋まで移動する。そこは牢と違って、扉を閉めてしまえば誰からも覗くことはできない場所だ。
だからこそ、ノワールは仮面とローブを外せるのかもしれない。彼は扉を閉めるなり、それらを外した。
「……っ」
仮面が外された瞬間、ラズワードはノワールから目を背けた。昨日の痴態を思い出して恥ずかしくなったのだ。自分の浅ましい姿を全て見た、そしてそんな風に導いた彼に嫌悪感を抱いた。
ノワールはローブの下は他の調教師と同じ黒いスーツを着ている。彼はローブに続いてその上着を脱ぎ、白いシャツ一枚になる。そして、黒いネクタイを外し、首元を緩めた。はだけた首元から、くっきりとした鎖骨が覗いている。
「……どうした?」
「――っ、い、いや……」
いつの間にかノワールのことを見つめていたことに気づき、ラズワードは血の気が引いたのを感じた。何を思って今自分は彼を見ていたのだろう。そんなことを考えて。
「……ラズワード」
「……っ」
「まず、戦いの前は敵の観察から始めろと言ったと思うけど……どこを見ているんだ。どうした、ちゃんと俺を見ろ」
ラズワードはそう言われて、なんとかその瞳にノワールを映す。その顔、その瞳。彼の素顔が、昨夜の記憶を呼び起こす。細い指、耳障りの良い声、冷たい瞳。自分を犯したその全て。それが、今再び目の前にある。
「……」
体が熱くなってゆく。これ以上見ていられなくなって、ラズワードはまた目を逸らしてしまった。
「……ラズワード」
「……」
「おまえ、まだ昨日の熱が抜けていないのか」
「――ち、違うっ……!」
思わず大声で叫んでしまう。本人に見抜かれてしまって、あまりの恥ずかしさにラズワードはノワールを睨みつけた。
「……う」
目が合って、ラズワードはびくりと体を揺らした。
「……ふうん、そうか」
「……だから、違うって言って……」
「まあ、仕方ないな。昨夜の君の乱れ方は今までで一番だったからな」
「――っ」
淡々と昨日の痴態のことを言われ、ラズワードはカッと頭に血が昇ったのを自分でも感じた。ノワールはふ、と笑い、さらにラズワードに追い討ちをかけてくる。
「そんなに俺の前での自慰はよかったか?」
「うるさい、だまれ……違うって言ってんだろ……!」
「は、どうだか」
ノワールがラズワードに歩み寄ってくる。ラズワードはなぜか逃げることもできずに、それを傍観していた。気付けば彼はもう目の前に来ていて、その瞳に見つめられて腰が抜けそうになってしまう。
「嘘はつかないでもらおうか。剣奴としてそんなんでは困るんだ。もしも、君が未だに昨日のことを引きずっているのなら、それなりの対処をしなければいけない」
「……だから、違うって……」
「……俺に嘘をつけると思うなよ」
が、と手を掴まれて、ラズワードは思わず声をあげてしまった。逃げようにも体の力が抜けてそれはかなわない。
するりとノワールの手が、服の中へ滑り込んでくる。すう、と背筋を撫でられ、思わずラズワードはため息を漏らしてしまった。掴まれていない方の手でノワールのことを突き飛ばそうと思えばできるのに、なぜかその手はノワールのシャツを掴むだけである。
「……それで? 『違う』んだったかな?」
「あ、……そう、だよ! お前なんかがどうしようと、俺は……う、ぁ」
「……そう。素直に答えたらご褒美あげようと思ったんだけど」
「……は、あ?」
がくがくと震える脚でなんとか体を支える。背を撫でられ、さらに彼のシャツから漂う仄かに昨日と同じ香りが鼻腔をつけば、理性は限界まで達しそうになってしまう。
「……昨日は自分の指でやらせてしまったね」
「……っ」
「素直に言ったら、今日は俺がやってあげるよ」
「――死ねっ!!」
最後の言葉にくらりと目眩を感じた瞬間、ラズワードはノワールを突き飛ばした。そうしなければ、頷いてしまいそうになったからだ。
「俺のことを馬鹿にしやがって……! お前、絶対いつか殺してやる……!!」
「はは……そりゃあ楽しみだ」
くすくすとノワールが笑ったのになぜか違和感を覚えたが、そんなことに構っている暇はない。口ではこういったが、本当は体が熱くて熱くてたまらないのだ。
ノワールが言ったように、もしも彼にあんなことをされたら……と考えると、後孔が疼いている。
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