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「お疲れ様」
調教も終わりくたりと横たわるラズワードにノワールは声をかける。シャワーもすべて済ませてもう彼は寝てしまいたいのだろう、ちらりとノワールをみるばかりであった。しかし、しばらくするとのそりと気だるげに起き上がり、ノワールのもとに近づいてくる。そして、膝立ちになって椅子に座るノワールを見上げた。
「……ノワールさま」
ちゅ、と触れるだけのキスをしてきた。
微かに頬を染め、今目の前にいるノワールだけをその瞳に写している。
「……ラズワード」
「……はい」
ラズワードはノワールの膝の上に頭をのせて目を閉じた。猫みたいだな、なんて思って頭を撫でてやると気持ちよさそうに微笑む。
「……今日さ、俺の部屋こない?」
「……えっ」
ノワールの言葉を聞いてラズワードは飛び起きた。驚きと戸惑い3割、嬉しさが7割、そんな目をしていた。
調教師が奴隷を私的な理由で連れ出すなんてこの施設では御法度だ。ましてやラズワードはレッドフォード家に献上される特別な奴隷で、ノワールは調教師のトップ。ラズワードをノワールが私室へ連れて行ったなんてバレたら大問題になる。
それでも、誘われたことが嬉しいのだろう、ラズワードはそわそわと落ち着かない様子だった。「行きたい」、そう言いたいが、ノワールの立場のことを考えて返答に迷っている、そんな様子だった。
「……大丈夫、バレないよ。俺は看守の動きは全部把握しているし、今調度監視カメラは故障中。俺の部屋はこの施設の最上階にあって、この時間ならば誰も起きてはいない。まあバレたらそのときはそのときだね。そのときは一緒に逃避行でもしようか?」
「な、なに言ってるんですか……バレないようにしてください……」
「……それはOKってことでいい?」
ノワールが笑うとラズワードが顔を赤くする。恥ずかしくて目を合わせられない、そんな風に俯いて、こくこくと頷いた。
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