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*** ――最後に二人で過ごした時のことを覚えているだろうか。そう、夜明けの空を見に行ったとき。あの時に見た漣の光が今でも頭から離れないよ。  空と海の青に抱かれて、俺はただ君のことを想っていた。  こういうと、また『俺に貴方の望みを映しているんでしょう』って君は言うかもしれない。違うよ。君自身を、俺は愛していた。……恋愛感情とは少し違うけれどね。ただ、心の底から君の幸せを願っていたよ。君の笑顔を想像して、君が俺のことを愛している事実に切なくなった。だって、君は俺の傍にいたら本当に笑うことはできないだろう?  それなのに、俺は今、君を欲している。そう、君に「死」を映し見て。  いつの間にこんなに俺の中の死への願いは強くなったんだろうね。君と会っていない間にも、生きているみたいに膨らんでいくんだ。俺自身への嫌悪が強まっていって、生きていることが怖くなっていた。……身勝手だろう? そんな理由で君の幸せ奪おうとしているなんて。でも、もう俺はどうしようもないくらい弱くて、子供で、自分の欲求を抑えられない。  俺はもう、自分で抑えることはできないと思う。だから、君が君の幸せを守るためには君が俺を拒絶しなければいけない。俺を拒絶できるくらいに、君は君の幸せを愛してほしい。  ごめんね。  君と俺の最後の思い出が、あの青い景色でありますように。漣の光が、夢の中へと消えていくことを願っています。

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