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「どうだ? すげぇだろ」
部屋に入るなりきょろきょろと落ち着かない様子のラズワードにエリスは笑って言う。窓際に立って、夜景を眺めながらラズワードは小さく感嘆の声を上げていた。
エリスはラズワードに近づいていく。華奢な背中は何故だか前よりもスっと綺麗で、心の中を何かがそわそわと撫でていく。
ラズワードの後ろに立ち、彼のすぐ横に手をつくと、彼は少し驚いたように振り返った。
「……エリス様」
「……すげえな、ここからの眺め」
「……は、はい」
真っ直ぐに夜景を見下ろすエリスをラズワードはポカンと見つめる。
正直なところ、ラズワードは落ち着かなくてしょうがなかった。エリスは何度も体を重ねた相手だということもあるし、愛などないと彼に説いておきながら結局自分がハルのことを好きになってしまったのだから。
「……なあ」
「はい……」
エリスに呼びかけられて、ラズワードはびくりと肩を揺らす。バチリと目があって、ラズワードは咄嗟に身を縮こめた。すっとエリスの影が自分にかかって、ラズワードは思わず声をあげた。
「あ、あの……!」
ラズワードの言いたいことは、エリスもわかっているのだろう。エリスはふっと笑う。
「……大丈夫だって」
「で、でも……! 俺、できません……、ごめんなさい……」
「……ラズワード、前をみろ」
「え……」
エリスが微笑んだ。前に彼のことを散々煽ったこともあってか、ラズワードはいまいちはっきりと断ることができなかった。元はといえば自分が悪いのだ。ラズワードはおとなしくエリスの言葉に従いもう一度美しい夜景に顧みる。
「……見えるか」
「……景色、ですか?」
「ちげぇよ」
エリスはラズワードの髪をつかみ、グイ、とラズワードの顔を上げさせた。
「窓に映った自分だよ」
エリスに言われて、ラズワードは自分の姿が窓に写っていることに気がついた。夜景にばっかり集中していたため気付かなかったが、部屋が明るいのもあってはっきりと映っている。エリスの行動にビクビクとしてる自分の顔が目に入って余計に不安が煽られた。
「おまえ……今日はいつもと違う服着て……目の色も違う……眼鏡もかけている……」
「エリス……様」
「……様、つけなくていいぜ。今日はいつもの自分を忘れろ。……今のおまえはおまえじゃない」
「――んっ……!」
かり、と耳たぶを噛まれてラズワードは身をよじった。
「まって、ください……! いや、です……! 俺……!」
「いいから……誰にも言わねえよ。わかっているよ、ハルとおまえが両思いなのも。……俺もアイツを傷つけたくないから、秘密にしてる」
「だったら、こういうことは……!」
「……悪ィ、さっきのおまえの目みたら、やっぱり俺もお前のこと好きなんだって、そう思い直した」
「……さっき……? あ、だめ……ッ」
耳の中に舌を捩じ込まれる。ゾクゾクと全身に走った快楽に、ラズワードは堪らず声を上げる。くらりと目眩がして窓ガラスに手を着くと、図らずとも臀部をエリスにつき出す格好になってしまった。そこにエリスの僅か堅くなったモノが押し当てられて、ビクン、とラズワードは身体を弓ぞりにさせる。
「……俺を、守ってくれたときの目。あの、人を守ろうって強い意思のこもった鋭い目つき」
「な、なんでそれで……! ん、ッ……」
「……そういう目している奴が昔から好きだったんだよ、俺。……ラズワード」
「あ、あぁッ……!」
ぴちゅ、と頭の中に水音が響く。しつこく耳を舐られて、音が絶えず響き、まるで脳を犯されているような気分だった。もう頭が痺れて、まともな理性を失ってしまいそうになる。
「おね、がい……します、だめ……ソコ、だめ……!」
「おまえ、耳弱いんだな……もっと欲しいだろ?」
「や、あぁぁ……」
ラズワードにとって、耳は一番の性感帯といってもいい部分だった。
……理由は単純。ノワールと身体を重ねる際、彼が毎回初めに責めてきた場所だから。
「はぁっ、んん……ぁん……」
エリスはラズワードが耳が弱いと知ってか、一層ソコ激しく嬲り始めた。すがりつくようにガラスについたラズワードの手に、自らの手を重ね、グイグイと服越しにアレを押し付ける。ずるずるとラズワードの身体が下がってくると、腰を突き上げて無理やりラズワードを立たせた。
「もう、もう……だめ、おねがい、しま……、ソコ、もう……」
頭の中がアノ記憶で満たされていく。耳を犯しながら少し意地悪なことを囁くあの人の声。それを聞いただけでいつも、身体が蕩けたようにくたくたになって、それからの行為にドロドロに堕ちていくのだ。ノワールの声、指、温もり……色んなものがフラッシュバックしてきて、ラズワードはもうなにも考えられなくなってしまう。
……背徳感さえも、忘れてしまいそうだった。
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