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「ほら……ラズワード。ちゃんと自分のところみろよ。すっげぇエロい顔してるぞ、今のおまえ……」 「あぁ……」  ラズワードの顎を掴み、エリスはラズワードに前を向かせる。顔を真っ赤にして、はあはあと熱っぽい吐息を吐き、目をとろんと潤ませたその顔は恐ろしく淫靡であった。 「なあ……いやらしいだろう……? おまえ、こんなきっちりした格好しておきながらさ……」  エリスはする、とラズワードのネクタイを解き、シャツのボタンを外していく。  ラズワードに見せつけるように、ゆっくりと。 「身体はこんなに……淫乱なんだからなぁ……?」 「やぁっ……!」  はだけたシャツをグイ、と開いてエリスはラズワードの乳首をきゅっとつまむ。その刺激に身体をよじり首を窓ガラスから背けたラズワードの頭を掴み、エリスはもう一度ラズワードに前を向かせた。 「……見ろ」 「……う、ッ……!」 「……可愛い乳首してんだろ? 自分でみたことある? こうやって摘むとな、ほら……こんなふうに真っ赤になって……だんだんとぷっくりしてくる」 「やめっ……あ、あぁン……ッ……!」  両手でくりくりと乳首を弄られ、ラズワードは立っていられなくなってエリスに身を預けた。それでもエリスは耳元で笑っただけで、手を休める気配はない。 「目を逸らすな」と強めに言われて、ラズワードはぼんやりとした目つきでガラスに映る自分を眺める。 そこに映った自分はまるで自分ではないようで、なんとなく客観的にラズワードはそれを見ていた。  くたりと身体を男に寄りかからせ、その目は堕落した女のように淫欲に濡れ。頬を紅潮させ、唇をぽかりと開けてそこから赤い舌が見えている。男の指の動きに合わせてぴくぴくと動く身体は白い蛇のようにしなやかで、力の抜けた腰はくびれを強調し実に艶かしい。もう、その姿は……ただの愛玩人形。いや、精液を貪る淫魔のような醜悪さ。  ……ああ、なんて卑しいイキモノなんだ……  いつか、大切な人を守れるような強さを手に入れたいと。そう思っていた自分の姿の理想像とはあまりにもかけ離れていて、ラズワードは自嘲するようにふ、と笑った。ガラスに映った自分は、まるで快楽に悦び微笑んでいるように見えた。 「あ、あん、あ、」  ぐ、と全身をガラスに押し付けられる。みっともなく臀部を突き出し、剥き出しになったその穴は今か今かと男を受け入れる準備をしている。ひくひくとソコが動いているのを自分でも感じて、ラズワードはくすくすと笑った。 「……エリス様」 「ああ?」 「……俺の、眼鏡とコンタクト、ちょっととってもらえませんか」 「?」  その顔に疑問を浮かべながらも、早く入れたいのだろう、エリスは黙ってラズワードの言葉に従う。眼鏡を借り物だということも忘れ床に投げ捨て、コンタクトを外す。入れるときはあんなに怯えていたのに、今のラズワードはいやに冷静だった。コンタクトを外し、元の青い瞳がガラスに映る。  ……そう、目を逸らしてはいけない。これが、自分なのだ。 「……エリス様……入れて……」  目を潤ませ、頬を紅く染め、もの欲しげに微笑んだラズワードの顔をみて、エリスはひく、と口元を引きつらせた。瞳孔が開いている。ラズワードの煽りに、興奮したのだった。 「――あぁッ!!」  ズブ、と大きくそそり立ったモノが挿入される。快楽が身体を突き刺した。ガラスに手をつき、激しく身体を揺すられながら、ラズワードは虚ろな瞳で前を見る。  吐息で白く曇ったそこに、自分が映っている。 「はぁッ……! あんッ! あぁあッ!」  ガラスに縋り付かなければ立っていられなかったためラズワードはぴったりと身体をガラスにくっつけた。目の前に、自分がいる。ガラスに映った、あまりにも卑しく乱れた自分がいる。  まるで、自分自身にキスをしているようだった。そのガラスに映る自分のみっともない姿にラズワードは羞恥心が煽られたが、目を閉じることはなかった。淫欲に濡れ、強さの欠片も感じることのない卑猥なその瞳を見つめ続けた。 「あッ! エリス、様……! すごい……もっと、あんッ、いいっ……!」 ――そうだ、これが俺だ。  ラズワードはクッと目を閉じ、身体を蠢く快楽に集中した。目を閉じると、まぶたの裏に浮かぶのはあの人の姿。 「……っ」 「ハッ……すっげ、今めっちゃ締まったなぁ……!」  淫欲をこの身体に植え付け、そして初めて「救いたい」と思った人。 ――ああ、元があの人なら……こうなるだろうな。  自分が強くなりたいと思ったのは、大切な人を守りたいから。今、その人はハルだけれど、そうした意思を初めてもったのが、たしかノワールに対してだったと思う。つまり、その「大切な人を守りたい」って、その想いをラズワードのなかにつくったのはノワールだ。  その人がこうしてこの身体に快楽を教えた。全部全部、この身体に存在するものはあの人がつくったんだ。 「あ、あ、あ、あ」  自分は屈強な戦士にはなれないだろう。王を守る騎士にもなれないだろう。こんなにも淫乱で、快楽に堕ちているのだから。  いいんだ、これが自分だ。 「――……ール、さま」 ――あの人がこんな身体にしたのなら、それが俺が存在する意味なのだろう。  卑しい愛玩人形に成り果てても、それがあの人の望みなら。受け入れるべきだ。こうして男に突かれて喘いで、快感に寄り添って……それでも、「強さ」を捨てたわけじゃない。淫靡な身体も、「強さ」を求める心も……どっちもあの人がくれたもの。 「あッ――」  イクその瞬間、ラズワードはそっと目を開ける。ガラスに映った自分と目が合って、勝手に笑みがこぼれてきた。  射精と同時に、ガラスに映る自分に口付けた。

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