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「時々おまえのポーカーフェイスには面食らうな、まったくおまえは恐ろしい奴だ」
「……何がいいたい」
「あの指輪をルージュに見せられた時、おまえの動揺が凄まじかったぞ。よくもまあ、あんな笑顔をつくれるもんだな」
「……わざわざそんなことを言いにでてきたのか、性格悪いな、おまえ」
リリィが出て行った後の、ノワールの部屋。彼女が出て行くのとほぼ同時に、ノワールの契約獣、グリフォンが姿を現した。ノワールと特別な契約を交わしてるグリフォンは、ノワールの感情をすべて読み取ることができる。先ほど、リリィに対して隠し通したはずの感情をグリフォンに言及されたノワールは、僅か苛立った風に眉をひそめた。
「……ハッ、よっぽどその指輪、おまえにとって特別なものなんだろう? 普段のおまえはこうして私が心を読んだくらいで腹をたてたりはしない」
「……別に。……ああ、そうか、グリフォンは知らないのか。これ、おまえと契約する前から持っていたから」
「……私と契約する前? 相当昔じゃないか。なんなんだその指輪」
「……リリィにこれ見せられたとき……思ったよ、「俺はこんなものまだ持っていたのか」って。くだらない。いくらあの人を信じたところで、何も変わらない。すでに俺はあの人のことを諦めているはずなのに……俺は、未だにこの指輪を捨てられない。今、捨てろって言われても多分できないかな」
「――その指輪」
グリフォンの中にノワールの記憶が流れてきた。そして、その指輪の正体を知った。
「……ああ、もう時間だ。いかないと」
腕時計をみて、ノワールが静かに言う。
「……あの人のところに」
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