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*** 「夜には止むっていうから、もう少しだと思うけど……濡れちゃったしシャワー浴びる?」 「……あ、は、はい……お先にどうぞ」 「そう、じゃあお先に」  ノワールが浴室へ消えてゆく。扉が完全に閉められたことを確認して……ラズワードはベッドに転がり頭を抱えた。 (う、嘘だろ!)  二人が雨宿りの場所として選んだのは、カフェのすぐ近くにあったこじんまりとした宿。宿に入るくらい断ることもないかと入って、部屋の扉を開けてみればそこにあったのはダブルベッドだった。恋人同士でもない二人がダブルベッドの部屋にはいるなんておかしい、そもそもこの宿自体がそういう宿なんじゃないか……ノワールは知っていたのだろうか……恐らく確信犯だ。このダブルベッドをみたとき眉一つ動かさなかったところをみると、この宿が「そういうところ」だと知っていたのだ。 (まて、大丈夫だおちつけ……一番近くにあったからここに入っただけだ……あの人はそんなに下半身だらしなくない、大丈夫……)  考えれば考えるほど心臓がバクバクとしてくる。「そのつもり」でここに入ったのなら、それにあっさりと付いていった自分が恨めしい。ハルに申し訳なくなってしまう。 「ラズワード……次、どうぞ」 「わあっ!」 「?」  もやもやと考えているうちにノワールはシャワーを浴び終えたようだ。いったいどんな顔をして出てくるのかと思いきやいつものすまし顔で、ホッとしたような、自分だけ変に考えてしまったことが恥ずかしいような。心配して損したぜ! と心の中で毒づきながらノワールを横切って、ラズワードは浴室へ入っていった。

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