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「――ミオソティス! ミオソティス!」
「施設」が一体何なのか。それを知ったレヴィが真っ先に向かったのは、ミオソティスの屋敷だった。親に黙って家を飛び出してきて、屋敷についてからも無断で庭に周り、ミオソティスがいそうな部屋に向かって叫んだ。
「レヴィ?」
窓から顔を出したミオソティスは、ぼんやりとした顔をしていた。レヴィは急いでミオソティスのそばまで寄っていって、こっそりと言う。
「逃げようぜ!」
「……は?」
「神族が来る前に、この村から逃げちまおう!」
「な、なに言ってるの……」
ミオソティスの瞳は、揺れていた。本当は逃げたくてたまらないのだ。でも、差し出されたレヴィの手を掴もうとはしない。迷っているように視線を泳がせている。
「……大人の人に捕まっちゃう」
「大丈夫! 俺が蹴散らしてやる!」
「……逃げて、お腹すいたらどうするの。お金ないけど」
「えっと……食べられる植物とか調べて! あと、魔物捕まえて焼いたり!」
「……どこに住むの?」
「お、俺が家建てる!」
ぐ、とレヴィは身を乗り出して、ミオソティスに手を伸ばした。真っ暗な部屋のなかにいるミオソティスは、どこか眩しそうな表情でレヴィを見つめている。
「お、俺が守るから! 大丈夫! 逃げよう、ミオソティス! な!」
「……レヴィ」
ミオソティスは、恐る恐る、手を差し出してきた。レヴィはその手を、しっかりと掴んでやる。
――それから、すぐに屋敷から抜けだして、二人は逃げようとした。ただ、子供の逃走などたかが知れているもので……あっさりと、空が茜に染まる頃には心配した村人たちに捕まってしまったが。
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