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レヴィがミオソティスと会わなくなってしばらくたった時のことだった。レヴィの家に、ミオソティスと彼女の父親が訪ねてきた。扇の絵付けが完成したのだという。久しぶりとなるミオソティスとの再会に、レヴィは嬉しくてたまらなかった。
扇をレヴィの父親に見せた後、レヴィとミオソティスは二人きりで話すことを許された。レヴィの部屋にいって、少し気まずいなか、ミオソティスの絵付けをした扇をみながら二人で話をする。
「この絵、なんで龍なの?」
「……レヴィっぽいから」
「俺? まじで!? かっけー!」
「……あのとき。レヴィが私と一緒に逃げようって言ってくれた時、真っ黒な世界に金色の龍がみえたような気がしたの。私を、穢い世界から連れだしてくれる、金色の龍。私を乗せて、どこまでも連れて行ってくれる……」
泣きそうになりながらそう言うミオソティスは、もう自分が助からないのだと、あきらめているようだった。そんな彼女をみて、レヴィは思わずその手を掴んで叫ぶ。
「もう一回……逃げよう! こんどこそ、捕まらないように……!」
「いい。いいの。私はもう、いい」
「何言っているんだよ、俺は金の龍なんだろ!」
「そうだよ、レヴィは金の龍。これから強くなって……私みたいな、誰かを救い出すの。この扇は、とても強い武器なんだって。今のレヴィには使えなくても、きっと勉強したら使えるようになる、強くなれる」
言葉を詰まらせるレヴィに、ミオソティスは扇を閉じて、それを持たせてやる。
「……この扇の名前、付けてあげたからそう呼んであげて。「風姫」っていうの」
「……かざ、ひめ? どういう意味?」
「風は、レヴィが使える魔術のこと。姫は……レヴィを強くさせる、一番の糧ってこと。あのね、王子様は、大好きなお姫様がいると強くなれるんだよ。大好きな人が側にいると強くなれるの。だから、この風姫をずっと持っていて、レヴィは強くなって。そして、誰かを救う、王子様になって」
「……誰かを救う、王子様って、」
レヴィは風姫を懐にしまうと、ミオソティスの肩をつかむ。びっくりしたような顔をしたミオソティスの目をみて、レヴィは絞りだすように言った。
「……俺のお姫様は、一生おまえだけだよ」
そして――ぎこちない、キスをした。
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