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*** 「おつかれさま」  会議が終わると、ノワールが声をかけてきた。皆が部屋を出て行ったのを確認すると、仮面を外す。 「なにか、不安なところは?」 「……不安しかないですけど、いえ、わからないところとかは特に」 「そう、ならよかった」  何事もなかったような顔。そんなノワールの顔をみて、ラズワードのなかで焦りが生まれてしまう。本当に、約束をなかったことにするつもりなのだろうか。もう諦めてしまったのだろうか。死にたいという彼の願いは、もう絶対叶わないのか。 「今日ラズワードが泊まるところだけど……大丈夫? 場所わかるよね。近くのホテル」 「大丈夫です、地図もらってるので」 「そう。あとで行くからさ、起きててもらえるかな」 「……えっ!?」 ――ホテルにくる!? ぎょっとしてラズワードは思わず大きな声をあげてしまった。しかしノワールはからっとした表情で付け加える。 「明日使うもので、渡さないといけないものがあるんだ。それの説明もしたいからあとでゆっくり時間欲しくて。今はちょっと俺、忙しいし」 「あ、そ、そうですか。わかりました、待っています」  バクバクと高鳴る心臓がうるさい。もう自分がわからなくなってしまいそうで、怖い。今は無駄に意識なんてする必要ないのに、と思って、また、自分をいやしく思ってしまった。

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