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――――― ――― ――  ラズワードが奴隷候補として施設にいたころ。レッドフォード家に売られる日が近づいてくる頃には、ラズワードとノワールは周囲の目を盗んで秘めやかな時間を過ごしていた。ラズワードが施設ですごす、最後の日。ノワールはラズワードを海へ誘う。まだ人の寝静まる明け方に、施設を抜けだして二人で海へ言った。  夜の海は黒い色。しかし、日が昇り始めると、深い深い青が広がってゆく。漣に光が反射してきらきらと煌めく様子を、ノワールは静かに眺めていた。 「……ラズワードの目に似ているね」 「……?」 「真っ暗な闇を裂いて、光が昇る。そんなラズワードの目に」  朝日を眺めるノワールの横顔を、ラズワードは黙って見つめた。闇を裂いて。光を導いて。君に殺されたいんだ、そんな言葉が聞こえてくるような気がした。  ラズワードはゆっくりとノワールに近づいていって、彼を抱きしめる。白いシャツだけを着た彼の身体は、細くて、ラズワードの腕のなかにもしっかりと収まった。ノワールは声もあげずに笑って、ラズワードの背に腕を回す。 「……ラズワード」 「はい……」 「……愛しているよ」  まるで、呪いのような言葉だ。ノワールの求める返事は、愛のささやきではなくて、 「……俺も、ノワール様のこと……愛しています」  貴方を殺しますという、約束だった。二人にしかわからない、約束がここで交わされる。静かな波の音、やわらかな潮風。徐々に昇り始める太陽の光。美しい景色も、心地良い音も、なにもかも、興味なかった。ただ、腕のなかで生きている貴方のことだけを、みていた。 「……ああ……待ってるよ――」

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