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「ああ、リリィさん……! 本当にお美しい……!」
とあるホテルの一室。部屋に入って来たルージュをみるなり、男はかっと顔を赤らめた。ルージュは扉をしめると、にこっと微笑んで男の首に腕を回す。
「あ、あの……僕のような平凡な男が貴女のような美しい方に触れていいのでしょうか……」
「もちろんよ。私からお誘いしたんですもの」
おどおどとする男に、リリィはその胸を押し付ける。そしてキスをした。艶かしい口付けに興奮した男にがしりと尻を揉まれて、リリィは甘い声を漏らしてやる。
「んっ……あ、……ぁ」
「リリィさん……!」
「……いっぱい、触っていいわよ。その代わり――」
――レッドフォード家の情報、教えてね。
微かに微笑みながら、リリィは囁く。
――男はレッドフォード家に関わる人間だった。それを知っていたから……リリィはこんなことをしてまで、この男に近づいた。ラズワードのことを聞き出すため。ノワールを救うため――大好きなノワールのために、この見知らぬ男に、抱かれる。
(ノワール……だめ。あんな男に溺れちゃ、だめ)
服を脱がされて、背中をすうっと撫でられて。好きな人以外の男に触れられる嫌悪感に、吐き気を覚えた。
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