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*** ハルが街へ行っているあいだ、ラズワードはマクファーレン邸に来ていた。  自分でここまできたのだが、正直ラズワードは気が乗らない。以前レヴィに身体をまさぐられたこともあるが、なによりもレヴィのしようとしていることに心を惹かれてしまっているからだ。神族を撃つための、革命。ノワールを殺したいラズワードにとってその革命はとにかく魅力的で、うまく勧誘されたりしたらうっかり気持ちが傾きそうだったのだ。  気を強く持って、もしもレヴィから革命の誘いをされても耳を貸さないようにしよう。そう心に誓って、ラズワードは門を叩く。アポはとっていたため屋敷の前の門はすぐに開き、中へ入ることを許される。庭園を横切っていき屋敷の扉の前まできたところで、中からひとりの少女が現れた。 「こんにちは。私がレヴィのところまで案内しますね、ラズワードさん」 「あっ――」  中から現れたのは、美しい青い着物を来た少女――ミオソティス。以前結ってあた髪の毛は下ろされてふわふわと風に揺れていて、その表情もどこか柔らかい。すっかり風変わりした彼女がミオソティスだと一瞬わからなかったラズワードは、びっくりしてしまった。 「ひ、久しぶりミオソティス」 「お久しぶりです。ふふ、ラズワードさんにまた会えて嬉しい」 「……」  ほんの少し話しただけで、わかる。彼女は変わった。前向きな言葉をためらいなく言うその姿は、以前からは考えられないもの。微笑みをたたえるその顔は、もとより美しい彼女の顔立ちをさらに華やかに彩って、直視することが難しいほど。ガラッと雰囲気の変わった彼女に、ラズワードですらもドキッとしてしまったくらいだ。  しかしここでラズワードが思ったのが、ミオソティスは今、幸せなんだ、ということ。レヴィについていって、彼女は幸せを手に入れたのだろう。以前の彼女が持っていた陰鬱な「雌らしさ」ではなく、きらきらとした「女性らしさ」を持っている彼女は、レヴィにきっと愛されている。なんだか見ているこっちまで嬉しくなるな、と思ったラズワードは思わず吹き出してしまう。 「こうもミオソティスのことを変えられるなんて、レヴィ様に嫉妬しちゃうかな」 「ラズワードさんが嫉妬?」 「男には女の人を幸せにしたい欲があるよ。俺だってミオソティスのことを幸せにしてあげたかった」 「おかしなことを言うんですね、ラズワードさん。私はラズワードさんからたくさん幸せをいただいていましたよ。ラズワードさんと一緒にいたときも、とても楽しかった」 「……かなわないなあ」  女の人は、愛されると強くなるらしい。自分のちょっとした口説き文句を軽く躱されたラズワードは、それを痛感してしまって苦笑するしかなかった。そんなラズワードの心のうちも知らず、ミオソティスは笑っている。  二人はほんの少し世間話をして、屋敷の奥へ歩き出す。ミオソティスと一緒にいればきっとレヴィはおかしなことをしてこない――そう思いつつも、レヴィの部屋に近づくたびにラズワードの緊張は高まっていた。

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