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***  レヴィが帰り、ハルとラズワードはハルの部屋へ向かった。部屋にたどり着くまでの間、始終無言であった。 「――ハル様、あんなことを勝手に決めて、勝手に参加して、……すみません」 「いや、そのことは別にいいよ。兄さんに言ったら大激怒だと思うけど、俺は別にレッドフォードが云々とかどうでもいいし」 「……」  部屋についても、ラズワードはハルと目を合わせられなかった。何かが、怖い。ハルは怒っているようには見えないが、距離を感じた。 「俺、」 「――わかってるよ。ラズは俺のことを愛してくれている。でも、それ以上にノワールに何かしらの感情を抱いているよね。それが、殺意なのか、違うものなのかは知らないけれど……ラズはノワールのことになるときっと俺のこと、忘れているでしょ」 「そっ……そんなこと、」 「浮気とか言ってるんじゃないよ。でも今回の件でわかったからさ。自分の判断で革命の参加なんて決めちゃって……ノワールを討つってことが、俺と一緒にいることよりもラズにとって大事だったんじゃない?」 「……ッ」  ハルの言っていることに、ラズワードは反論できなかった。全くそのとおりだというわけではないが、否定もできなかったのだ。  ノワールを殺したいという想いは、理性を失ってしまうほどに大きい。だから、もしかしたらハルへの愛を一瞬消し去るほどに強いかもしれない。ハルのことは間違いなく、愛している。一生側にいたいと思っている。それでも――ノワールのことになると、彼のことで頭がいっぱいになる。その感情は、「愛」ではないはずなのだけれど。 「……だからね、ラズ」 「……ハル様」  頭の中が、混乱、混乱。自分が何者なのかがわからなくなるくらいにラズワードのなかは色々な感情が犇めいて、おかしくなりそうになった。そして、泣きそうになった。心臓一つに収まりきらない感情の波が涙として溢れそうになった。  そんな、ラズワードを。ハルがそっと抱きしめる。 「はやく、自分のなかで答えを見つけて。そして、俺に教えて。それがどんな答えだとしても、俺は君の全部を好きだから」 「……ッ」 「全部終わったら、今度こそは俺のことを一番にしてね」 「――はい……」  優しく自分を抱くハルの暖かさに、ラズワードはとうとう涙を流した。

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