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***  リリィの魔力をたどっていけば、リリィは自室にいるようだった。さらに魔力の反応を汲み取っていけば、リリィはまだジャバウォックを召還していない。とりあえずはまだ無事だとわかり、ノワールは一瞬の安堵を覚える。  しかし、何を思ってリリィがロゼにあんなことを聞いたのか。それが気になって仕方のなかったノワールは、ドアのノックする。あまりリリィを責めることはしたくないが、このままでは彼女が死んでしまうかもしれないから。 「……ノワール」  部屋からでてきたリリィはノワールの顔を見るなりぐっと眉を潜めた。  少し前まで、リリィはノワールのことを見る度に嫌悪感を顕わにするような顔をしていた。しかし、今のこの表情はそれとは違う。ノワールへの嫌悪、というようにはまるで見えない。それが余計にノワールの焦りを煽る。  ここまで彼女の考えていることがわからないのは、初めてだったから。 「もしかして、止めにきた?」 「えっ……」 「あの人から聞いたんでしょう? 私が、何をあの人に教えてもらったのか」 「……、俺が止めるってわかってるんだね、じゃあ……どうしてそんなことをやろうと思ってるんだ。ジャバウォックがどれほど危険な魔獣か……わかっているんだろう」 「……ノワールってすごく頭がいいけれど、時々すごくばか」  リリィがふっと笑って、髪の毛を耳にかける。そんな彼女の仕草に、ノワールはどきりとした。こんな彼女は見たことがなかったから。  こんなにもまっすぐな目をした彼女を、ノワールは知らない。 「私、貴方が誰を愛しようが構わない。貴方が幸せになれるならね」 「リリィ……?」 「……言い直す。貴方を幸せにできないような人を愛することは、許さない」  じっとノワールを見上げたリリィの瞳が、涙に濡れていた。  リリィは固まってしまったノワールの胸ぐらを、両手で掴む。そして、力のない腕で彼を引き寄せて、そのままうなだれてしまった。 「笑わせないでよ……貴方は、今まで私の手をひいてくれたのに。そんな貴方が、死にたいって言っている。私がどんな気持ちになるか、わかる? ねえ……!」 「……、ど、どうしたんだよ、リリィ……」 「貴方を死へ導こうとしているのは、誰……! 貴方を惑わせるのは、誰……! 私はそいつが許せない、貴方の未来を軽々しく奪おうとするあいつが、許せない!」 「リリィ、おまえ、誰のことを言って……」  どんっ、とリリィがノワールを突き飛ばす。リリィの言葉に呆けてしまっていたノワールは、その衝撃を逃がすこともできずに、ふらりとよろけてしまった。  呆然と見つめてくるノワールを、リリィはじろっとにらみつける。ノワールの暗い瞳に映る、希望()が恨めしい。 「私の全てをかけてでも、あいつを殺すわ。私の命をジャバウォックへ捧げてでも、私はラズワードを殺してみせる」

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