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Nothing is going to stop me

*** 「聞きましたわ。ラズワード様、レヴィ様の革命に参加されるんですって?」  不意にマリーに聞かれて、ラズワードはぎょっと目を瞠った。  一体彼女はどこからそんな情報を手に入れてきたのだろうか。ハルはまずそういったことを彼女には言わないとわかっていたラズワードは、そういえば、と彼女という人間について思い出す。彼女はどこから手にいれるのかわからないような情報を持っていたりする。今回はレヴィ側から、どういった経路かは謎だが情報を得たのだろう。  そうなれば、はぶらかすこともできず。ラズワードは困ったようにため息をついた。 「いえ……まだ保留です」 「神族はノワール様の力が頭一つ抜けているので、他にはあまり目がいかないと思いますが……気をつけたほうがよくってよ。ルージュ様も、とても危険な存在です」 「……ルージュ様、ですか」  マリーはラズワードをけしかけているというわけではなさそうだった。単純に、神族に戦いを挑もうとしているラズワードを心配している様子である。  ラズワードはルージュの名を聞いて、う、と言葉に詰まった。パーティの時に接触を持った彼女。思ったよりも普通の乙女の印象を受けてしまったから、彼女を敵に回すと戦いづらい……そう感じたのである。 「……ルージュ様についての情報は、あまりなかったですね……ノワール様なら戦闘のスタイルもある程度把握していたのですが、ルージュ様となると検討もつきません」 「そうですの? ルージュ様は、召還魔術を主に使うお方よ。Sランクの魔獣を何匹も召還できるそうだわ」 「あー……召還魔術ですか。それなら……」 ――召還魔術。それを聞いて、ラズワードはほっとした。  召還魔術、とは魔獣もしくは聖獣と契約を交わし、使役する魔術である。ラズワードの周りで使っている者はあまりいなかったが、わりとポピュラーな魔術であり、使っている者も多い。  ルージュが召還魔術を使って戦うというのなら、実質、ラズワードが戦う相手は契約獣となる。ルージュ本人を殴るわけではないということで、ラズワードは安心したのだった。  しかし、マリーはそんな安堵の表情を浮かべるラズワードを窘めるように、むっとした表情を浮かべる。 「召還魔術自体は、ラズワード様ほどの腕ならば恐れることはないでしょう。けれど、ルージュ様をなめないほうがいいですわ。彼女は一匹、とんでもない化け物を飼っているのです」 「化け物?」 「知っているでしょう? ジャバウォックとグリフォン、特別な契約獣のこと」  ノワールとなった者にはグリフォンが与えられ、ルージュとなった者にはジャバウォックが与えられる。これは、神族のなかでの決まりであった。  グリフォンは、非常にプライドの高い獅子の聖獣。美しい白い毛並みと、大きな翼が特徴の、防御に特化した聖獣である。主のことが気にくわなければ構わず喰い殺してしまうという、扱いが非常に難しい獣だ。  対して、ジャバウォック。これは至上最悪の化け物だと言われている。禍々しくグロテスクな黒い龍の姿をしており、契約した者は必ず殺されるという逸話がある。意志疎通はほぼ不可能であり、理性のない怪物に等しい。  ラズワードはその名を聞いて、ふとノワールの契約していたグリフォンを思い出した。グリフォンはみる限りノワールに懐いており、危険な契約獣には見えなかったが……ジャバウォックはまだ見たことがない。 「先に対策をしておいた方がいいですわよ。ラズワード様が思っている以上に恐ろしい怪物なんですから……」 「いや、……まだ戦うと決まったわけじゃないですが……ええ、そうですね。わかりました、マリー様」  ノワールに挑む前に、ジャバウォックにやられていたのでは話にならない。たしかにマリーの言う通りだと思ったが、ラズワードにはそれについて考える余裕はなかった。ノワールへの気持ちも整理しきれていない今、革命のことまで頭が回らなかったのである。

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