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「――それじゃあ、行ってきます」  屋敷の者たちに見送られて、ハルとラズワードは屋敷をあとにした。皆、笑顔で二人を送り出しているが――ラズワードはなんとなく、違和感を覚える。  見送りをする者たちのなかでエリスだけがなぜか不安そうな顔をしていた。エリスはハルの顔をずっと見つめていて、口元だけで笑っていた。  なぜ、エリスがそんな顔をしているのか――ラズワードはそれをすぐにわかった。ハルの表情が優れないから、それにつきる。兄であるエリス、そして恋人のラズワードだけが気付く、僅かな程度でハルの表情はいつもよりも影を帯びていたのだ。   「……ハルさま、」 「行こうか、ラズ」 「……はい」  ここ数日のハルの考えていることが、読めない。しかしその原因がすべて自分にあることをわかっているラズワードは、それを聞き出すこともできない。  この旅行は何を意味するのだろう。自分はどうするべきなのか。  自分のゆく道は決めたはずなのに――ラズワードは、再び答えを失いかけてしまっていた。

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