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ピロートーク
志狼の逞しい体の上に、鉄平はぐったりとうつぶせたまま荒い息を吐いていた。
情事の後の呼吸が落ち着き、冷静になってきて、自分からいろいろとねだってしまったことに羞恥で真っ赤になる。
今更だが、恥ずかしい。
今、裸のまま抱き合っていることも恥ずかしくなり、志狼の上から降りようとするのを逞しい腕で引き止められる。
「あ……」
「もう少し、このまま……」
また、志狼の胸に抱かれる。
力強い鼓動が心地よい。
鉄平はウトウトと眠ってしまいそうになる。
「タマ。バイトは辞めてこい」
「……へ?」
寝落ちしかけていた鉄平が、ハッと起きる。
「お前一人くらい余裕で養える。ここにいろよ」
鉄平は戸惑った。
「なんで? そこまで? 俺のこと、よく知らないのに」
「もう隅々まで知ってるだろうが」
志狼がニヤリと笑って、鉄平の尻を揉んだ。
「あっ! やだ!」
慌てる鉄平に軽いキスをした。
「……でも、すぐには無理だよ。お世話になってたから。急に辞めたら、迷惑かけちゃう」
鉄平がしょんぼりした顔で言う。
それを見た志狼の胸がきゅっと締め付けられた。
しょげた顔まで可愛いのだ。
「でも……ほんとに、なんで?」
鉄平が向日葵の瞳で志狼を見る。
志狼も不思議に思った。今までセックスした相手を家に連れ帰ったことなどない。
甘やかしたいと思ったことも初めてだ。
「……多分、お前にいて欲しいからだ」
「えっ!?」
鉄平は目をまん丸に開き、じわじわと顔を赤くした。
「林檎みたいだな」
志狼は笑って言う。その笑顔があまりに甘かったので、鉄平はますます顔を赤くした。
「いろよ、ここに」
「……うん。はい」
鉄平はコテンと小さな頭を志狼の逞しい胸に乗せて答えた。
志狼は鉄平のアッシュグレイの髪を撫でた。
志狼の大きな手が、柔らかく鉄平の髪を撫でる。その心地よい感触に、今度こそ鉄平は夢の世界に旅立っていった。
end
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