6 / 6

ピロートーク

志狼の逞しい体の上に、鉄平はぐったりとうつぶせたまま荒い息を吐いていた。 情事の後の呼吸が落ち着き、冷静になってきて、自分からいろいろとねだってしまったことに羞恥で真っ赤になる。 今更だが、恥ずかしい。 今、裸のまま抱き合っていることも恥ずかしくなり、志狼の上から降りようとするのを逞しい腕で引き止められる。 「あ……」 「もう少し、このまま……」 また、志狼の胸に抱かれる。 力強い鼓動が心地よい。 鉄平はウトウトと眠ってしまいそうになる。 「タマ。バイトは辞めてこい」 「……へ?」 寝落ちしかけていた鉄平が、ハッと起きる。 「お前一人くらい余裕で養える。ここにいろよ」 鉄平は戸惑った。 「なんで? そこまで? 俺のこと、よく知らないのに」 「もう隅々まで知ってるだろうが」 志狼がニヤリと笑って、鉄平の尻を揉んだ。 「あっ! やだ!」 慌てる鉄平に軽いキスをした。 「……でも、すぐには無理だよ。お世話になってたから。急に辞めたら、迷惑かけちゃう」 鉄平がしょんぼりした顔で言う。 それを見た志狼の胸がきゅっと締め付けられた。 しょげた顔まで可愛いのだ。 「でも……ほんとに、なんで?」 鉄平が向日葵の瞳で志狼を見る。 志狼も不思議に思った。今までセックスした相手を家に連れ帰ったことなどない。 甘やかしたいと思ったことも初めてだ。 「……多分、お前にいて欲しいからだ」 「えっ!?」 鉄平は目をまん丸に開き、じわじわと顔を赤くした。 「林檎みたいだな」 志狼は笑って言う。その笑顔があまりに甘かったので、鉄平はますます顔を赤くした。 「いろよ、ここに」 「……うん。はい」 鉄平はコテンと小さな頭を志狼の逞しい胸に乗せて答えた。 志狼は鉄平のアッシュグレイの髪を撫でた。 志狼の大きな手が、柔らかく鉄平の髪を撫でる。その心地よい感触に、今度こそ鉄平は夢の世界に旅立っていった。 end

ともだちにシェアしよう!