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鬼灯

 俺と蒼真(そうま)は5歳の時に出会ってからずっと一緒にいた。今年で12年目、所謂幼なじみというやつだ。そんな俺が蒼真との関係を"友達"と称されることに小さな痛みを覚えるようになったのはいつからだっただろうか。  気づけば視界の端で捉えた蒼真を、目で追うようになっていた。俺の知らない蒼真がいるのが嫌になった。女の子や俺の知らない誰かと話してるとモヤモヤとした気持ちを抱えるようになった。 ­­ どうしようもなく、触れたくなった。  一緒にいたいのに、一緒にいるのが苦しくなった。理由がわからなくて辛かったけど、それでも離れるほうがずっと辛くて、意地でもそばにいた。    蒼真が初めて女の子と付き合った時、この気持ちの名前を知った。名前を知ってすっきりしたけど、苦しみは増えるばかりだった。  俺より他のやつとの用事を優先されるのが嫌だった。蒼真が誰かと付き合うと苦しかった。別れると、――安心した。ドロドロとした感情が渦巻いてとまらなかった。  俺は蒼真のために離れる選択をできるほど善人ではない。けれど、関係が崩れるリスクを背負う覚悟もない。  そして耐えられなくなって、笑いながら、おどけて聞くのだ。   「最近ずっと彼女ちゃんと一緒じゃ~ん。ボクちゃん寂しい!蒼真は俺のことなんてもうどうでもいいのね!」    蒼真は優しい。そしてその優しさが俺の望む言葉を紡ぎ、小さな傷をつける。   「そんなわけないだろ。お前がいなくなったらめっちゃ困る」 「じゃあ俺のこと好き?」 「はいはい好きだよ。てかそういうのは女の子だから許されるんだぞ。男じゃきもいだけだろ」 「あー蒼真そんなこと言うんだ~じゃあもージャンプ貸さねー」 「え、それは困る。じゃあ大好きな悠悟(ゆうご)くんにお土産買ってきてあげるから許して」 「そんな安い男だと思うなよ!キーホルダーなんざいらないからな!」 「じゃあクッキーの詰め合わせ」 「許そう」  どちらからともなく笑い合う。今この時間は(まご)うことなき楽しい時間なのだ。その『好き』が、俺の望むものではないとしても。          花言葉『ごまかし』    

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