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幸せ探し

これまでの交際歴は中学生の時に1人、高校に入ってからまた1人。 どちらも俺より小柄で大人しい印象のもちろん2人とも可愛い女の子だった。 けれど付き合って3ヶ月目には、秀哉くんじゃ物足りないとそんなニュアンスを含んだ言葉で振られてしまう。 好きか嫌いかよくわからなくても、好きだと言われれば単純に嬉しくて、何も考えずに付き合っていたのがばれたのかなって始めは思ったけれど、今となってはそうじゃないと断言できる。 目鼻立ちは派手じゃないけど割とはっきりしている方。 垂れ目なので、気が弱そうだと思われることが多いが、意外に実際はそうでもない。 イエスかノーか白黒はっきりさせるのが性に合っているらしく、俺の回りにはさばさばとさっぱりしてる奴が多い。 身長は最近170センチを越えた。 まだまだ伸びる予定だが、伸びるスピードは低速だ。 家族構成は父と母、それから弟が1人の4人家族。 こんなどこにでもいる普通の男子高校生が、俺、中野秀哉(ナカノシュウヤ)。 ─ただ人と違うのは、生まれ持つ第2の性、所謂バース性と呼ばれているものが、Ωだということ。 日本の総人口の6割以上が65歳を迎え、少子高齢化に拍車がかかった昨今、希少なΩ性は国の保護対象となっているが、子供を産む道具として偏見の目で見られているのが現実だ。 故に性犯罪に遇いやすく、Ωはバース性を偽って生きるのが基本である。 それに倣って俺もまたβと偽り暮らしている。 10歳になると誰しもに義務付けられている受けなくてはならないバース検査。 俺がそこでΩと判明してからは、母親からは散々口を酸っぱくしてΩであることを隠しβとして皆と同じように行動しなさいと厳しく言い聞かされてきた。 俺の母親もΩだから必死になるのもよくわかる。きっとこれまで大変な苦労があったのだろう。 そうして言われるがままβの振りをし続けてきた結果、女の子と付き合うも長続きせず、俺自身の性的欲求が異性に対して一向に湧かないこともわかった。 だから秀哉君はつまらない、物足りないと言われてしまうのだ。 だってそれはきっと、腹の奥に女性と同じ器官を宿しているのだから仕方がない。 Ωである自分を満たしてくれるのは、αだけ。 俺の本能がそう囁いているのだ。 こればかりは抗えない自然な欲求。 俺はβと偽りながら、番となるαを探している。 きっとそこに俺の幸せがあるんだと思っている。

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