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第一幕

 鳴宮家、といえばこの学校でその名を知らない者はいない。父親が有名企業の社長、母親が大女優。絵に描いたような、大金持ちの家だった。この学園にも支援をしているらしく、理事長は鳴宮家に頭があがらない――そう、この学校に通う、鳴宮家の息子にも。  鳴宮(なるみや) (せつ)は、宝来学園に通う、高校二年生。家柄に加えて本人も優れた人物であるため、学園中の憧れの的である。眉目秀麗・成績優秀・運動神経抜群の三拍子。さらに生徒会長であり、生徒たちの指揮をとっている。 「鳴宮会長だ! かっこいい~っ!」 「こっそり写メっていいかな……!」  校内を歩けば生徒たちが彼を取り囲み、それは漫画のように彼を讃えだす。自然と廊下には生徒たちが並んでまるで出迎えをする召使いのよう。もはや宝来学園の名物といっても過言ではないだろう。  しかし――そんな、「みんなの憧れの生徒会長」はちょっとした仮面をかぶっている。周囲に讃えられて、盛大にモテて、それでも謙虚且つ堂々とした姿でいること、それが契が誰からも慕われる理由なのだが―― (今日も俺は校内一のイケメンだな) ――契は、とんでもなくナルシストなのであった。

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