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「次。次は? どこいくんだ、氷高」  ショッピングをしてゲームセンターに行って。色んなところを周って、もうすっかり日も沈んでしまった。あんまり遅くまで遊んでいると親が心配してしまうのだが、契はすっかりそんなことを忘れてしまっていた。目をきらきらとさせて、氷高に次の行き先を問う。 「もう、夜ですよ。契さま。お屋敷に帰らないと、絃さま(契の父)が心配されます」 「あっ……そっか、連絡とかしていなかった」  可愛らしい契の様子に苦笑しながら、氷高は契をたしなめた。もちろん、自分自身残念に思っていた。もっと契と一緒に色んなところへ行きたかったし、色んな話をしたかった。「主人」と「執事」の関係を忘れて、普通の恋人同士のように過ごしてみたかったから。  でも、さすがにそれは執事としてよくないと、氷高は自戒した。契の親に心配をかけるのは、一番ダメなこと。雇い主に不信を抱かれるのは最も危惧しなければいけないことだ。 「初めてのデート、楽しかったですか?」 「んー? うん、楽しかった」 「そうですか、それはよかったです。これで、契さまも誰とでもデートができますね」 「……え?」 「練習、でしょう? これは。デートの練習として今日は契さまと俺はデートしたので」 「あ……」  街頭の下を歩き、駅を目指す。人もまばらな、夜の公園。静かなトーンで話す氷高の横顔を見つめながら、契は僅かに眉尻を下げる。 「……俺、別に他の人とデートする予定ないんだけど……」 「なぜ? せっかく練習したのに……」  どことなく寂しそうな顔をする契を、氷高は不思議そうな顔で見つめる。契は自分の意図に気づいてもらえないことが面白く無いのか、次第にむっと不機嫌そうに唇を尖らせ始めた。 「氷高以外の人とデートしてどうすんだよ。氷高以上の人なんて、いないじゃん……っていうか氷高って俺に他の人とデートして欲しいの?」 「……、」  ……天然なのか。これを素直に言ってしまうあたり、さすがの契さまだ。  氷高はぐっさりと心臓を射抜かれながら、冷静を保つために手のひらに爪をたてるようにしてぎゅっと拳を握りしめた。めっちゃ痛い。 「そうだ契さま、練習し忘れたことがありましたね」 「質問に答えろォ!?」 「――キスの練習を、忘れていました」

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