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 両方の乳首をこねくりまわされて、契は脚をもじもじとこすらせた。莉一の雄に反応した契の体は全身が性感帯となり、体の隅々が敏感になっている。乳首はぷっくりと膨らみ、第二の性器といってもいいくらいに感じる場所になっていた。ぎゅ、ぎゅ、と乳首をこねられれば、アソコがズクンとうずき、そして甘い電流が指の先まで、足の先まで、隅々に行き渡る。  もう、契は乳首を可愛がられただけで、がちがちに勃起してしまっていた。股間に立派なテントが張り、「乳首触られただけで感じてしまって、チンコがびんびんしてしまいました」と主張している。こうもはっきりと勃ってしまってはもう弁解の余地もない。契は莉一に触られて、いやらしい気持ちになっている。隠しようのない事実に、契はかあっと顔を赤らめて、手で顔を覆い隠した。 「僕と、執事さん。どっちが気持ちいい?」 「あ、っ……う、……んんっ……」  乳首をこりこりされながら、勃ちあがったものの先端を、布越しにくりくりといじくられる。ビクッ! ビクッ! と腰をを跳ねさせて、耐えようのない快楽に契は悶えに悶えていた。  わけがわからなくなって、ぼろぼろと涙を流し。そして、無意識に自らの口を手で塞ぐ。莉一と、氷高。どっちに触られるのが気持ちいいか。その質問に、よからぬことを答えてしまいそうになったからだ。頭のなかは、氷高のことでいっぱいで、触られるなら氷高がいいなんて、そう思っているのに。いけすかない意味のわからない執事だけれど、彼にもう一度ふれられたいなんて、考えているけれど。  ……けれど。  莉一の責めがあまりにも強烈な快楽を生んで、頭を真っ白に染め上げてきて。従順な体に引きずられるように……この口も、本当の想いを裏切るような名前を言ってしまうのではないかと……そう思って。契は、口を塞いでいたのだ。 「契くん」 「あっ……は、ぁっ……!」  しかし、莉一はそんな契の胸の内を覗いたかのように、残酷。すっと唇を契の耳に近づけて、吐息を吐きかけるようにして低い声で契の名をささやいた。  それはもう、ないはずの子宮が疼くような、官能的な声で。 「気持ちいいって、正直に言ってみて」 「ひっ、……ぁ、ひっ……!」 「もう、苦しい恋は、やめよう。君をこんなに縛り付けているのに、恋心は見て見ぬ振り……あんな悪い男に恋するのはやめよう?」 「あっ、ぁ、……」  まるで暗示をかけるように囁かれる、甘美なる誘惑。それは耳から直接脳みそに吐きかけられるようで、契の頭の中は真っ白になってしまった。体も、莉一に種付けされる準備が整いましたとばかりに熱くなってゆく。  びんびんになったペニスの先っぽのすじを、莉一の指が往復する。何度も何度も、契を追い立てるように。すりすり、とひたすらに擦られて、そして耳をくすくすと甘ったるい笑い声でくすぐられて。じんじんと熱いペニスに水位があがっていくような感覚が迫ってきて、さらにお尻のなかがぎゅーっと締まっていって。 「さあ、契くん。僕の名前を、呼んで」 「あ、あ、あ、……あっ……り、ーち、さ……」 「うん。そして、……そのまま何回も僕の名前を呼んで……」 「りーち、さん……りーち、さ……」 (もう、だめぇ……)  契の腰が大きくビクンッ! と跳ねる。その瞬間、莉一はタイミングをはかったようにペニスの竿を握り、ごしごしと激しくしごいてきた。 「いっ……イクゥっ……! りーち、さぁ、……ん……!」  どぴゅっ、どぴゅどぴゅ。下着の中で、契のものが弾ける。  契は甲高い声をあげながら……思いっきり、射精してしまった。とろっとろに蕩けた顔で、気持ちよさそうに顔を真っ赤にして……下着のなかを、ぐちょぐちょにしてしまった。 「ん……」    契はもう、言いようのない喪失感に見舞われて、くたりと横たわったまま動けなかった。ひく、ひく、と腰を震わせながら、ぐったりと莉一のことを見上げる。  莉一はにこりと残酷なほどに優しい微笑みを見せて、なでなでと達してしまったペニスを撫でてきた。そして、契の鼻先にそっと口づけをすると、ショートケーキよりも甘い声で、囁く。 「いい子。ちゃんと、イケたね。可愛いよ、契くん」 「あ……」  イってしまって、なぜだか哀しくて。少しだけ不安感がさしていた契の心に、その優しい言葉はまるで猛毒のように広がってゆく。ねぎらうような褒め言葉を、契の体は「嬉しい」と解釈してしまったのか……勝手に、胸のなかがぽかぽかと暖かくなっていってしまった。頭が、莉一を完全に受け入れる体勢にはいってしまったのだ。  莉一はすっと目を細めた。感じ取ったのだろう。「契を、自分のオンナにした」と。優しく契の瞼にキスを落とし……ゆっくりと、服を脱がせてゆく。 「う、……ん、……」  下着には、すっかり精液のシミがついていた。するっと脱がせれば、ぬちゃ……と精液が糸をひく。契はもう、ぼんやりとその様子を眺めることしかできなかった。 「契くん。これから、君を抱くよ。嫌って言うなら、これが最後」 「……」  服を脱がされ、問いかけられ。契は、返事をしない。  服従します。それが、答えだった。契はもう――莉一のものになってしまった。  莉一が契に跨がりながら、服を脱いでゆく。完璧な肉体美は、すっかり茫然自失をしてしまっていた契も目を奪われるほど。天上のライトに照らされ逆光となっている莉一の体に、契のペニスがまた、堅くなってしまう。 「りいち、さん……」 「ん?」  体が、熱い。なにもかもが、おかしくなる。抱かれたくてたまらない。熱くて爆発しそうなものを、解放して欲しい。  契はぼんやりとする意識の中で、莉一の名を呼んだ。もういっそ、自分から彼を求めてしまえ。胸の中に居座り続ける氷高の存在を、捨ててしまうんだ。そんな、どこか痛々しい想いの中で。  契は自ら脚を広げ、莉一にアソコをさらけ出す。そして……ぽろ。と一筋の涙を流しながら、囁いた。 「ひどくして……りいちさん……」  その言葉は、もの悲しく、部屋のなかに木霊する。莉一は一瞬息を呑んだかと思うと、じっと契を見下ろして、ゆっくりと目を細めた。そして、少しばかり悔しそうに瞼を震わせて、くっと息を吐き出すように微笑む。 「契くん……君は、好きな人を、そうやって誘うの?」 「え……?」  このまま激しく抱かれるものだと思っていた契は、きょとんと目を見開く。莉一は先ほどまでの芳しいほどの雄はどこへやったのか、静かな抑揚のない声で契に問いかけた。 「僕が氷高さんだったら、どう誘っている?」 「り、りーち、さん……?」 「……やさしくして、って。そう誘ってるんじゃない?」 「……、」  ――莉一は、なにを言っているのだろう。  契にはそれが理解できなかった。しかし、理解できないと同時に「たしかにそうかもしれない」、そんなことも思ってしまう。  きっと、自分が氷高に抱かれるとき。ぐちゃぐちゃになって、わけがわかんなくなって、そして氷高に見下ろされたとき。そのときは、あんな切ない気持ちは抱かない。そして、「ひどくして」なんてきっと言わない。手袋を外したあの綺麗な手に触れられたくて、自分でも整理できない氷高への想いを抱きしめて欲しくて、きっと、こう言うだろう。  ――優しくして、と。  あの男は、なにを考えているかわからないから。だから、そんな彼の気持ちを確かめるように、そうねだるのだ。ひどくされたらきっと、傷ついてしまうから。優しくされて、安心したいから。 「そんな風に、傷ついた顔をして「ひどくして」なんて言われたら……さすがの僕も、強奪できないなあ」 「き、……傷ついてなんか……」 「うん。気持ちよさそうにはしてたけど、ずーっと別の人のこと考えてたでしょ」 「……っ」  莉一の言葉は、どこまでも図星だった。契は責め立てられていた、ついさっきまでの自分を思い返してさっと青ざめる。  憧れの俳優に抱かれようというときに、なぜ、自分は氷高のことをずっと考えていたのだろう。なぜ、一つになる瞬間に、「ひどくして」なんて言ったんだろう。  きっと――そんな迷いを、快楽で破壊して欲しかったのだ。氷高のことを考えると、胸が苦しくなるから。氷高への謎のモヤモヤを全て、莉一に壊して欲しかった。  それなのに、莉一はそうはしてくれなかった。もう、セックスを続けるつもりはないらしく、ごろりと契の脇に寝転がっている。 「……どうしたの。そんな顔をして」 「……いや、あの……俺……自分のこと、わかんなくなっちゃって……」 「なに? 氷高さんのことでしょ? わかんないって?」 「なんで、こんなに氷高のことを考えると苦しいのか……わかんないんです……苦しいのに、……どうしても、考えちゃって……」  莉一は契の言葉を聞くと、「へえ?」と眉をハの字に曲げながら意地悪く笑った。そして、ぐに、と契のほっぺたを引っ張ってくる。 「なんでかって? はやくそれに気付けるといいね。言っておくけど僕は助言しないよ? 敵に塩を送るわけにはいかないからね」 「……敵? 莉一さんと氷高がなんで、敵?」 「……ふ、さあ。とりあえず、僕は氷高さんの敵なので。今回は身を引くけれど、契くんのこと諦めたわけじゃないから。契くんが僕に心から甘えてくれるまで……僕は君に、精一杯アタックさせてもらおうかな」 「えっ、ええ、莉一さん……!?」  ふっ、と不適に笑った莉一は、ファンが見たら卒倒しそうなくらいなほどにかっこよかった。契は混乱しながらも、そんな莉一にかあっと頬を染めてしまう。  今度はくしゃっと笑った莉一が、契の額にキスをした。そして、布団をひっぱりあげると、契を抱き込むようにして布団に潜り込む。そして、目をぱちぱちとさせて驚く契にぐっと顔を近づけると、言うのだった。 「氷高さんに負ける気は、ないからね」

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