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第10話

ゆっくり侵入すると、それに合わせてテラサキの背が反っていった。 「はああああ、ん、あ」 始めはゆっくり入口付近で出し入れを繰り返した。 「ああ、あ、あ、も、っと、おく、だ」 テラサキが焦れて、シラキを見上げてくる。 快感に揺れる瞳に、シラキも煽られる。 「あああああ、ん、ん」 焦れて身をよじるテラサキを押さえつけるように、浅く抽送する。 「焦らすな、ん、あ」 思わず笑いを漏らしたシラキの頬が抓られた。 「いたっ」 「わら、うな」 「すいません、あまりにも思った通りの反応なので、つい」 まだ何か言おうとしたテラサキに、音がするほど激しく深く押し込むと悲鳴のような声が上がった。 「ひ、ぃああああ」 強く肌の当たる音を響かせて、打ち付ける。 「あああああああ、んい、い」 テラサキが枕にしがみついた。 「テラサキ、さん」 シラキが呼ぶと、びくんと震える。 「ああ、あ、中で、イけ、んああ」 「うん」 「あああ、い、で、る、あ、あ」 「ん、僕も」 「ああああっ」 達したテラサキの中がシラキを搾り取る。 「はあ、ん、んあ、ん」 中で射精される感覚と、達した余韻にテラサキがびくびくと震える。 「はあ、はあ…」 荒く息を吐きながらそんなテラサキを見下ろしているシラキを、余韻に震えながら瞬きをするようにテラサキも見上げた。 そのまま見つめ合う。 「……なんだ……」 「…その、前から思ってたんですが、僕が初めてじゃないですよね、テラサキさん」 「……………」 テラサキは眉を寄せ、汗で張り付いた髪をかきあげる。 「…………」 返事がないのは肯定、と取れる。 少なからずショックを受けていると、テラサキはそんなシラキをちらりと見た。 「…侮蔑するか…」 「いえ、そういうわけでは…」 テラサキはシラキを見ない。 「使い古しは嫌か」 「違います!」 シラキはテラサキの顔を挟んで自分を向かせる。 「ただ、ただ、…嫉妬しただけです…」 テラサキはゆっくりと目をシラキに向け、それから伏せた。 「…嫉妬する必要はない。俺の意志ではないからな」 「え、どういう…」 「サカエダだ」 「………」 「あいつのいわゆる稚児だった」 「………」 「囲われていたともいうか…」 「…育ての親って、言ってませんでした?…」 「育てる、保護する、その代償だ」 「…ひどい…」 シラキの顔が怒りや嫌悪で歪む。 「…ずっと、ではない。あいつの興味を引く数年だけだ」 「……何年…」 「15の歳から3年程か」 「………」 「あと2年、あったかもしれないが、逃げ出した」 「え」 「海賊になる、と海に出た」 シラキは思わずテラサキを抱きしめた。 強く、強く。 「2年の間、取り戻そうとするあいつから逃げ回って、やっと、興味を引く歳を過ぎた。それ以降は、アンタ以外いない。自分の意思で寝た男はアンタだけだ」 ぎゅうぎゅう抱きしめてくるシラキに、テラサキが苦笑いする。 「どうした」 「すいませんでした」 「なぜ謝る」 「そんな、話をさせて、すいませんでした」 テラサキはシラキの頭をぽんぽんと叩いた。 「…大昔のことだ。アンタが気にしなければ、いい」 「……気にはします…」 「…………」 「そんなひどいことをするサカエダを許せません」 「…あいつには構うな。あいつは恐ろしい。どこと繋がっているか、俺すら把握していない」 「………許せない…」 テラサキはシラキの顔を掴んで、自分を向かせる。 「忘れろ。…もう一回だ」 「……」 「なんだ、もう抱けないのか」 「そんなことはありません」 シラキが答えると、テラサキはニヤリと笑う。 「証明しろ。今のは良かった。ただし焦らすな、いいな」 シラキは苦笑いした。 「…それは、約束できませんね…」 シラキは再びテラサキに被さった。 翌朝。 眼が覚めると、腕の中にテラサキがいなかった。 飛び起きるようにして、服を着てフロアに降りていく。 「おはようございます」 山吹が声をかけてきた。 「ア、テラサキさんは」 「ああ、泉に行かれましたよ」 「え、泉?」 シラキがきょとんとすると、ヤマサトがからかうように言う。 「昨夜の情事の汚れを落としに行ったに決まってるじゃん」 シラキがかあっと赤くなると、さらにからかい始める。 「ねえ、盛り上がったんでしょ?」 「ヤマサトちゃん」 ユカリが咎めるように言うと、ヤマサトが少し拗ねたように頰を膨らませた。 「だってぇ、ユカリさんも見たでしょ?明らかに船長の顔付きが違ってたよ」 「…はいはい、確かにね」 「どういう…」 シラキが聞くと、ユカリは肩を竦める。 「まあ、一言で言えば幸せそう?」 「色気何割増?」 「3割はいったでしょうね」 アイカワが答える。 「やばい~」 ヤマサトが楽しそうに笑い転げる。 「………」 「海に出るのが憂鬱」 ユカリがため息とともに言うと、アイカワも頷く。 「全くですね」 「………あの…、どういう…」 シラキがきょとんとして尋ねると、アイカワが苦笑いした。 「船長目当ての賊が増えるんですよ」 「シラキが乗船してきてから、特に色気振りまいてるからね、船長ってば」 「色気…って」 「もともと船長にはサカエダの愛人という噂が…。あ、ご存知ありませんよね」 アイカワが失言したと青ざめた。 「いえ、聞きました」 シラキの返事にほっとしたような顔をした。それから苦笑いをする。 「まあ、そんな感じで、船長を狙う輩が多かったんですが、シラキと出会ってからは略奪をほとんど止め、そんな輩から奪うことで我々は凌いできたんですよ」 「え、そうだったんですか」 「そしてシラキが助け出してくれて、戻ってきてからはなんだか色気が増したようで、狙われることが増えましてね。まあ、シラキは思い当たることがあるんでしょうが」 「………」 シラキは赤くなって俯く。 「そして島での、俺の男発言。さらに何があったか知りませんが、船長のあの様子。襲われる確率は増えましたね」 「サカエダにも気をつけないと」 「ですね。面白くなかったでしょうね、自分の手から逃げ出した船長が男を作ったんですから」 「…僕は、渡しませんよ、サカエダには」 シラキが眉を寄せると、ヤマサトがにっこり笑う。 「その調子で頑張ってよ。シラキの責任だからね。今までだってムラサキさんが頑張って来たけど、ギリギリだったからね」 「頑張ります」 「ほんと、頼むわよ」 ユカリにまで言われて、シラキは苦笑いした。 「…そんな、酷いんですか…」 「じき、わかるわよ」 「で?船長の所に行くの?」 ヤマサトがニヤニヤ笑った。 シラキは答えず、フロアから出た。 遠くで「やっぱり~」と笑う声がした。 泉にやってくると、テラサキが岸に寄りかかるようにして居るのを見つけた。 足音にテラサキが振り向く。シラキを見つけて、小さく微笑んだ。 「起きたのか」 「ええ、姿がないのでびっくりしました」 シラキが答えると、吹き出すように笑う。 「ここじゃ他に行くとこはない」 シラキが近づいてくると、振り返り岸に腕を乗せた。 「一緒に入るか」 「…入るだけじゃ済みそうにないので、やめておきます」 「なんだ、つまらん」 そしてまた背を向ける。 シラキはテラサキの横に腰掛けて、足を泉に浸した。 「すいませんでした」 「なんだ、急に」 テラサキはそのままの姿勢で、仰ぎ見るようにシラキを見る。 「もう、略奪はしてないんですね」 「…アイカワ辺りに聞いたのか…」 「はい」 テラサキは溜息を吐いた。 「…やってることはあまり変わらん…」 「変わりますよ。…僕にも手伝わせてください…」 「…………アンタが?………」 「ええ。貴方を守りたいんです」 「…アンタの手を、汚させる訳には…」 「汚れるとは思いませんよ。守りたいものを守るだけですから」 「…………」 テラサキはしばらくシラキを見上げていたが、起き上がってシラキの前に立つ。 そして軽く口づけをしてきた。 それを黙って受け止めていると、急に引っ張られ、泉に落ちた。 「うわっ」 派手な水しぶきをあげて、シラキは水に沈み、それからずぶ濡れで顔を出した。 「もう!何するんですかぁ、服が、濡れちゃいましたよ」 文句を言うシラキに、テラサキの腕がするりと巻きついてきた。 テラサキの顔は楽しそうに笑っている。 思わず見とれてしまうほど。 「やっぱりアンタも一緒に入れ」 そしてまた口付けをしてきた。 「うわ、何、ずぶ濡れじゃん」 「…テラサキさんに、泉に落とされましたぁ…」 「ちょっとぉ、そのまま上がってこないでよ」 「えー、ひどい」 「ひどいはどっちですか。拭き掃除大変なんですよ」 「シラキ、あっちで拭いてきて」 「…はあい…。……テラサキさん、笑いすぎです」

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