12 / 12

2-おまけ

 白鳥の中に二度目の精を放ってようやく、白雪は自らを抜いた。 「ひやぁ…………はぁ……」  抜いた刺激にすら僅かに痙攣した白鳥の瞳は蕩けきってぼんやりとしている。口元は緩み、口の端からは飲みきれない唾液が溢れていた。  一度目を放った後、白雪はたっぷりと白鳥を味わった。長いストロークで焦らしつつも、的確によがる部分を擦ってやり、時に前立腺をピンポイントに突き上げて。  悔しいもので、最初が想定よりも早かった。あまりに心地よく締め付けるものだから、白雪自身もコントロールがきかなかったのだ。  こんな事は初めてだ。大抵は相手の射精感すらもコントロールし、「ゆるしてぇ」と快楽に泣き濡れるまで許しはしないのに。 「淫乱な体ですね、先生。真面目な顔の裏側で、こんなに感じやすく、可愛い顔で誘い込むなんて……しかもここがまだ、物欲しそうですよ」  先程まで挿入していた後孔が物欲しげにパクパクしている。そこからはトロトロと媚薬入りの潤滑油が溢れ出て濡れそぼっていた。  これは白雪の姫としての能力。薬から成分だけを取りだし、再生成する。濃度も、取り出したい成分も選べる。当然それらを混ぜ合わせ、濃度を調節することも可能だ。  この能力を最大限に活かすため、ひたすら薬学の勉強をした。これは将来役に立つ。童話世界などと狭い中に囚われず、こちらの世界にも影響を持てるように。  白雪の生家はこちらの世界にも接点を持っている。その医療部門などは今から白雪の能力を買っている。  今回は紅茶とジェルボールに催淫作用と興奮剤、そして精力剤を混ぜてみた。全ての効果が完全に現れて満足なデータが取れたが、少し強かったかもしれない。既に出るものもなく、なのに萎えずに嬌声を上げる白鳥を見ると改善しなければと感じる。  当然あとに影響は残らない。ブレンドした薬はなんの副作用もなく、健康も害することはないように慎重に作ってある。 「…………」  トロリと垂れ、太股を汚す姿を何の気なしに見ていると妙な興奮が再び沸き上がってくる。だがこれ以上彼を抱けば潰してしまうだろう。そのくらい、彼の孔は名器だ。  ジェル媚薬に多少含めた弛緩作用で受け入れやすくしてはいたが、それがなくても入口は柔らかく受け入れてくれる。  そうかと思えば中は熱く襞が絡み、ピッタリと吸い付くように馴染みが良かった。襞が多いのかもしれない。  これが刺激を与えると今度は奥へ奥へと誘い込み、チューチューと吸い始めるからたまらない。気持ち良いと途端に欲しがって全体を締め付ける。  襞が多い事などは生まれもっての才能だが、他は白鳥の日々の生活の賜。社交ダンス部の副顧問であり、彼自身ダンスの大会に出場する選手でもある。  優雅なダンスは意外と体力や筋力、柔軟性が必要だ。美しい姿勢をキープするためのインナーマッスル。長時間動く大腿筋。これらは締めつけなどを良くしてくれる。  さらに男性では苦労する股関節の柔軟性も白鳥は高い。日々のストレッチを欠かしていないのが良く分かる。膝を割り開いた時も無理なく開脚ができる。 「いけませんね、私としたことが。こんな事を考えていると余計に欲しくなる」  苦笑し、汚れた体をウェットティッシュで拭き取り、更に濡らしたタオルで丁寧に拭ってやる。これでとりあえずは気持ち悪くはないだろう。  今後も長く楽しませてもらうのだから、手入れは丁寧にしなければいけない。  だが困った。机の上で完全に気を失っている大人を抱える力はない。  どうしたものかと思案していると、不意にドアをノックする者があった。  鍵はかけてあり、今日は大切な客人と終日話しをすると伝えてあるから邪魔は入らないはずだ。  それでも警戒し、白鳥の体に毛布を掛けて見えないようにしてから、白雪はドアへと近づき声をかけた。 「どちら様ですか」 「ツバメです」  合い言葉に、白雪は頷き鍵を開け、人一人が通れるだけの隙間を開ける。彼も心得ていて、開いてすぐにドアを通り抜けた。そうして再び施錠だ。  ツバメこと、緑川烝は銀のアタッシュケースをローテーブルに置くと、素早くマイクとカメラを回収していく。随分と手慣れていた。 「データは全て、私の所に転送していますね?」 「はい。そのように言われていますので」 「親指姫がバックアップを取っていたりはしませんか?」 「していません」  それを聞き、安心する。  これら一連の会話や映像は録画されている。これまでの動画が外部に漏れると危険になるのは白鳥ばかりではない。そんな生データを他人が持っているなど、我慢ができない。もしそうなればハッキングしてでも消す。  この画像は帰宅後、白雪が全てチェックし、編集する。白雪の顔が映らないギリギリを狙い、顔が映る場合はぼかしを入れる。白鳥に関しては全て出すが、そもそも許可していない奴に見せる気はない。 「あぁ、ツバメ。一つ頼みがあります」 「はい」 「白鳥先生をソファーに移動させたいのですが」  マイクとカメラの回収を終えた緑川は立ち上がり、軽々と毛布にくるまれた白鳥を抱き上げソファーに寝かせ、更には乱れた服装も直してしまう。  随分と手慣れているものだ。 「親指姫は普段どれだけお前に甘え、我が儘を言っているのやら」  甲斐甲斐しくあの我が儘癇癪少年の世話をする様子が見て取れ、思わず苦言を呈してしまう。  だが緑川は能面のような無表情から、僅かに口元を綻ばせた。 「それが、可愛いのです」 「物好きですね」 「はい」  また涼しい顔に戻ってしまった緑川は、一礼して部屋を出て行く。後には疲れ果てて眠る白鳥と、それを見つめる白雪だけが残った。  だいぶ外が暗い。会議机に資料を広げ、生徒会の仕事を片付けている白雪は、座ったまま伸びをする。仕事はきっちりとこなし、求められる以上の成果を示す事こそが、生徒会の頂点に君臨する者の使命だ。  この季節はクラブの予算などが話し合われる。  昨年度の成績、部員の増減、問題の有無。それらを加味して部費の予算を出す。会長である白雪が各部からの予算申請を見てこれらを考え、増減を示さないと会議ができない。 「社交ダンス部は安定の実績ですね。特に萌黄や鏡は世間も注目している。問題行動もなく、支出計算も丁寧。部員も品行方正で、今年新たに二十人近く入りましたか」  まぁ、当然と言えば当然、社交ダンス部の副顧問は白鳥だ。顧問の先生がおっとりとしている分、鬼教官がきっちり締めている。彼が問題行動を黙認したり、支出計算を間違ったりするはずがない。 「まぁ、その白鳥先生が一番の問題行動をされていますけれどね」  思いだして笑みが浮かぶ。キツい瞳が蕩けて濡れて、厳しい言葉を紡ぐ唇が緩み唾液を垂らしながら喘ぐ。溢れる言葉は可愛く甘い睦言で、白い肌を染め上げ、乳首をピンと尖らせ、肢体をくねらせる。  鬼教官の裏側に淫乱さと可愛らしさ、そして今どき絶滅危惧種並みのピュアさを持ち合わせている。きっと、教師の顔は虚勢なんだろう。 「おっと、いけませんね。ついつい楽しくなります」  彼がそのうちに嫌々をする事なく身を捧げる。心からの服従に悦びを覚える。そんな日がくるだろうか。  いや、それも面白くない。抵抗しつつも覚えた快楽に身を焦がし、恥じらいながらも欲望に従う。そうした羞恥をいつまでも持ち続けて欲しいとも思ってしまう。従順すぎるペットはそのうち飽きるものだから。 「さて、どこまで楽しませてくれるのでしょうね、白鳥先生。まぁ、あまりにピュア過ぎると沢山可愛がってあげたくもなるのですが」  ここまでされて白雪を一切疑った様子のない白鳥の視線や言動を思い起こし、良心が僅かに痛みはするが些細な事だろう。  今一番の楽しみは目を覚ました彼がどんな顔をし、何を言うのか。言いくるめ、駄目なら多少脅してでも側に置く。  許しの無い者に易々と触れさせるほど安い人ではない。 「さて、次は誰をあてがいましょうか……」  新しいペットの調教を考えるように、白雪の頭の中は白鳥で一杯になっていた。 END

ともだちにシェアしよう!