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異空間を抜けだしても、波折はぐったりとしたまま目が覚めることはなかった。無理やり起こすのも悪いような気がして、沙良は波折を背負って自分の家まで帰ってきた。
「ただいまー……あー、夕紀 今日帰ってないんだっけ……」
母親は他界、父親は夜遅くまで仕事、妹の夕紀は今日は友だちの家にお泊り。そうなると今、この家には誰もいない。
「ん……」
「あ、波折先輩」
玄関にあがったところで、背中で波折が身動ぐ気配を感じた。振り向けば、ぼんやりとした表情で波折が家の中を見渡している。
「すみません……波折先輩起きなかったので、俺の家連れてきちゃいました」
「……」
波折はいまいち状況を把握できていないようだ。気だるげに頬を沙良の肩に預けて、言葉を発さない。
「ちょっと疲れていると思うけど……波折先輩、一旦お風呂入りましょう? あの部屋シャワーとかついていなかったから……服の中、気持ち悪いでしょ」
沙良はぼーっとしている波折を浴室まで連れていき、放り込む。そして、「着替えとタオル持ってきますから入ってて」とだけ告げて、ぴしゃりと扉を閉めた。
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