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「おてつき……おて、つき?」
「沙良ちゃーん?」
パンをもそもそとかじりながらぶつぶつと何かを呟いている沙良を、結月が苦笑いしながら呼ぶ。一日中様子がおかしかったもので、さすがに心配になってしまったのだ。
「……あのさ、こう……あの子はお手つきだよ、って言われたらどういう意味だと思う?」
「おてつき? あれじゃないの? 処女じゃないよって」
「……マジで?」
「えっ? なに? 沙良ちゃんが好きな人がそうらしいって?」
「あの人もう誰かに処女奪われてるの!?」
「知らんがな。っていうか誰」
別に前に誰かと付き合っていようがどうしようが、構わない。でも、あの波折が身体を許すなんて、一体その相手とはどんな関係だったのだろう、と気になったのだ。これだけ必死にアプローチしても自分は上手くいっていないのに。そしてその誰かに波折は自分の知らない顔を向けたんだな、と思うとぐつぐつと嫉妬で体の中が煮えくり返りそうになる。
……っていうかなんで鑓水先輩は知っているんだろう。波折先輩が話したのかな。
「うう~……鬱だ」
「病んじゃう? 病んじゃう?」
「病んじゃう~」
ちゃかしてくる結月の声が聞こえない。苦しくて、気持ち悪くて、吐きそうになった。
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